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白銀の……④
白虎の男が持ってきた器にはお粥のような食べ物が湯気を立てている。
「******」
彼の雰囲気から食べられるかと聞いているように感じたのでありがとうと受け取り、口を付けた。
「うま………」
こちらに来て何も食べていなかったのでかなり空腹で、夢中になって頬張った。
温かい食べ物に張り詰めていた緊張の糸も少し解れ、目頭が熱くなる。
あっという間に完食したケイはテーブルで食事を取っている男の元へ器を戻しに行く。
「ありがとう、助かった。」
きっと通じてないだろうがお礼を言うと彼は少しだけ柔和な表情を浮かべたので多分ニュアンスで通じたのだろうと解釈した。
その後熱があるケイは再びベッドで休息を取った。
深い眠りについた所で夢を見た。
懐かしい向こうの世界の記憶だ。
そしてかつて愛したその存在が寂しそうにこちらを見つめていた。
「奏多 ……?」
「ケイ……」
細身の体に綺麗な顔立ちをしたその青年はケイの恋人だった人だ。
優しく、控え目で触れれば壊れてしまいそうな儚げな奏多はケイに取って安らげる存在だった。
そんな奏多が別れようと言ったのは高校を卒業する少し前の事。
「ねぇ、ケイは本当に僕のこと好きなの?」
その言葉は青天の霹靂だった。
あんなに毎日傍にいて、色んな所に遊びに行って、セックスもして、愛の言葉を囁いて………
今目の前にいる奏多はあの時と同じ表情でさよならと呟いた。
「待って……
なんでっ……なぁ奏多!!」
だが無情にも奏多はケイに背を向け遠ざかって行く。
「奏多!!」
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