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未知②

お互いの名前を知れた所でシルヴァはニヤリと笑みを浮かべると、ケイの唇へキスした。 一瞬だけの触れるキスだけだったがシルヴァは満足気に鼻をふんと鳴らし、ケイから離れていった。 「何なんだよあいつっ‼」 誂われているように感じ苛立ちを顕にしていると、パサッと何かをこちらに投げ込まれた。 「な、何……」 感触から布の様で広げてみると、それはこちらの世界の服装だった。 「*****」 「……着替えろって?」 確かに今着ている服では目立ってしまう。 彼なりに配慮してくれたのだろう。 「ありがとう、助かる。」 日本語でお礼を言うとニッと口角を上げた。 どうやら"ありがとう"の意味は覚えてくれたらしい。 早速着替えてみた。 インナーは白で、ズボンと膝丈まであるフー ド付きの上着は黒だ。 姿見がないので変ではないか分からないが、まぁ着られれば何でもいい。 着替え終わるとシルヴァはいつの間にか身支度をしており、宿から出るのだと理解する。 行く宛てのないケイはどうしようか考えていると、シルヴァは当たり前のようにケイを連れていこうとする。 もしかしてまたノイルと同じ様に自分を売ろうとしているのではないかと疑ってしまうが、キスまでするような男がそんなことするだろうか? いや、騙されてはいけない…… しかし他に行くところもないし、何よりこの世界の事はほとんど分からない。 いざとなれば獣の姿になって逃げればいい。 それまでは利用させて貰うと、ケイは彼に着いていくことにした。

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