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第5話:

 水を流し、手を洗って何事もなく戻ってくると、服を着てすっかり元の姿に戻った望月が、撮影した動画をスマホで確認しているところだった。 「どうだ、名カメラマン大橋の腕は」  茶化すように話しかけると、望月は困惑したような表情を大橋に向けた。 「僕、こんな顔してたんだ」 「おう。でもやっぱり固定カメラはもうひとついるかも。どうせ編集するなら、局部の映像とおまえの表情を映した映像を、うまい具合に繋げたら最高だと思う」  評価する大橋の言葉に、望月は、ぱぁっと顔を明るくさせる。 「これ、エッチだと思う?」 「ああ。俺は今までの動画の中で今の撮影が、ダントツに、おまえの表情がいやらしかったと思う。試しに投稿してみれば? 下着も履いてるし編集ナシでいけるだろ」 「大橋くん」 「何?」  望月はきらきらと明るい表情で大橋を見つめた。 「その……ありがとう! やっぱり大橋くんに相談してよかった」 「なんだよ、礼を言うなら、ちゃんと結果出てからにしようぜ」 「これも、自分じゃないと思えば、なんていうか、その……エッチだなって思うし」 「だから、それは閲覧数増えてから、な?」  頭ひとつぶんくらい低い、望月の頭をぽんと叩く。 「また、撮影に付き合ってくれる?」 「ああ、目標達成に向けて俺も出来る限りの協力はするよ」  もじもじと恥ずかしそうな表情だった望月の顔が、ぱぁ、と明るくなり、黒い瞳には意思が感じられた。 「なんか大橋くんのポジティブさを見習いたいって思った。よろしくお願いします」  深々と頭を下げられ、大橋は、ははは、と照れ笑いするしかなかった。  きっと望月が本気になったら、動画はもっといやらしくなるだろう。頑張ろうと前向きになっている望月の期待に応えるためにも、今度ここに来るときは、二回くらい抜いてこよう、と心に誓った。

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