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第9話:

「こんばんは、ソウです。こないだ投稿した動画が初めてデイリーランキングで一位になりました。すごく嬉しかったです。よろしくお願いします」  まずはランキングのお礼をするという指示通りに、黒縁眼鏡をかけ、ソウになった望月が最初に挨拶をする。そしていつもと違うのは、まだ服を着ているということだ。 「えっと、これはいつも家で着ているやつで、ユニシロのルームウェアです……」  トップスは白地に黒の横ボーダーで、ボトムスは紺色のスウェット上下を座ったまま脱いでいく。服の話をしながら脱いで、という指示も大橋の提案だった。 「中はTシャツ着てます。どこで買ったかなぁ」  うーん、と考え込む仕草も二十二歳の男子にしては幼く見えて、ほっこりとする。  職場での望月はあまり感情を表に出さず、誰かと仲良くしているところも見かけないので近寄りがたい印象を持っていた。しかし、小島の言うように中性的な雰囲気と、瞳が印象的な容姿と、かわいらしい仕草は十分魅力的だ。これまで動画に寄せられたコメントにも、その容姿と体の綺麗さを褒める内容のものは多く、男女の比率でいうと女性のほうが多かった。ならばあえて動画の中で行為以外の雑談をすることで、動画の中で見せるいやらしい顔とのギャップもまたソウの魅力になるだろうと大橋は考えたのだ。 「あ、このボクサーパンツは……グレーのほうがえっちだって言われて……」  大橋は思わず苦笑いする。間接的に自分のことを話題に出されるのは、妙に照れくさい。律儀にそんなことまで話してしまうところも、好感が持てる。 「最初は、下着の上から触って」  突然の大橋の声に望月に、ぴくんと体が反応する。 「下着の上って……こう?」  望月の右手がその声に応えるように、ボクサーパンツの中央を下から上へゆっくりとなぞる。大橋はそれに合わせて、カメラをその手元と下着にズームしたあと、すぐ全体が見えるように戻す。 「先端、もう濡れてる?」 「えっ……あ、うん……」  そしてカメラを下着越しの先端に寄せる。下着の中で上向きに収納されているその棒状の輪郭に沿って撫でながら、指摘された先端を、丸く円を描くように触るとじわ、っと布地に染みてくる。その瞬間をカメラはしっかりと捕えた。 「前より感じるの早くないか?」 「そんなこと……」  前回の二回目の撮影のときも大橋の存在を意識してか、一回目よりも早く反応していたが、今回はそれ以上だ。見られていると意識している以外にも、話しながら行為に及ぶというのは一人の行為のようでいて実は共同作業で、恥ずかしいことを指示されていると思えば、興奮度合いがまた違うのだろう。 「まだ直接触ったらだめだよ」  その大橋の声に、こくんと頷く。言われたまま触り続けている望月の全体図をカメラはずっと映しているが、望月のものが下着の中でむくむくと膨れているのがわかるし、息遣いも少しずつ乱れてきているし、何より表情がどんどんいやらしい顔になっていくのもわかる。  そして今はさっきよりも大橋の様子をちらちらと伺っている。 「何? どうしたいの?」  それをわかっていて、あえて聞く。 「あの…直接、触って……いい?」  まだって言われるかな、と考えているのか、不安そうに聞いてくる望月の顔を見ていると、意地悪をして焦らしたい衝動に駆られる。 「触りたいの?」 「うん……」  時折、体をぴくっと震わせつつも、自分からの返事をすがるようなまなざしで待っている望月を見ていると、このまま自分の意のままに操れるのだとわくわくする。もっと我慢させたいような、気持ちよくさせてあげたいような、脳内の悪魔と天使が交互に囁く。 「わかった、いいよ。でも俺がいいっていうまで、イッちゃだめだよ」  ようやく許されて安堵できるはずだったのに、さらに次の制約が課され、望月の表情は困惑しているように見えた。自分の好きなときにイケるから自慰行為なのに、それをあえて封じてしまう。今までの動画は、単調な自慰行為動画だったが、これでちょっと違った動画になるだろう。 「あぁ……っ」  下着の中に右手を差し入れた望月は驚いたような声をあげた。 「どうした?」  大橋の問いにぷるぷると首を横に振る。その恥ずかしそうな様子に、下着の中で何が起きているのか、察した。 「どうなってた? 入れた手、カメラに見せて」  どうやら図星らしく、望月は恥ずかしそうに視線を泳がせ、それでも観念したのか、下着に入れていた右手をそっと開いて見せた。カメラでその手をアップにすると、右手は大量の粘液で濡れていた。

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