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第11話:

 実はここに来る前に、二回抜いてきた。もちろんオカズはお気に入りのAVで、男女の絡みで勃起する自分を再確認してきたけれど、すでにそんな自分を失いそうになっている。履いてきたデニムの中で、自分のそれが、むずむずと疼いていることに気づいていた。 「前と後ろが見えるように立膝ついて、横向いてみて」  大橋の指示どおり、望月はそろそろと膝をつき立ち膝になった。下着が前と後ろで手のかたちに膨らんでいる。見えなくとも、何が行われているのか、容易に想像がつく。 「ふぁあっ……はっ……」  望月の左手は背中側からまわされ、下着の中で指が後ろの穴に、浅めの挿入を繰り返しているのが、下着の布地が波を打つのでよくわかる。あからさまに見えているよりもずっといやらしい。ようやくいつものポジションになれたせいか、望月の上下に扱く右手の動きはさっきよりも早くなっている。撮影されているという自覚が薄れつつあるのか、快感に任せた息遣いがさっきよりも荒くなっている。 「もうガチガチだね。でも、まだイッちゃだめだよ」  意地悪な大橋の言葉に、現実を思い出したようで望月の動きが止まる。このまま勢いに任せるとイッてしまいそうだったのだろう。 「そこ、同時にするのが気持ちいいんだ?」  その言葉に、こくこくと早く頷く望月に、限界がすぐそこまで来ているのがわかる。早く楽にしてあげたいような、もっと焦らしたいような、再び大橋の脳内に天使と悪魔が同時に現れる。 「いやらしい顔、こっちに見せて」 「あ……ああ…ッ」  ゆっくりと顔をこちらに向けるが、その視線の先はレンズではなく大橋だった。明らかに懇願している。もうイキたいのだろう。 「はやく動かしてみて、さっきみたいに」  その言葉に、望月の表情は今にも泣きそうな顔になる。そんな顔をさせたくなかった、それなのに自分はその顔で興奮もしている。矛盾している。それも理解している。 「あ……無理……」  望月の体は、ぷるぷると小刻みに震え始める。 「はやく」  容赦ない言葉だと思う。少しでも手を動せば溢れてしまうのか、大橋を見つめて、何かを哀願している望月の姿を、目に焼き付けるかのように大橋はじっと見つめた。嫌ならやめればいいのに、大橋の言葉に従おうとする望月の姿から目が離すことができない。 「ふっ……ふ、……うあっ……あああっ!」  右手が少し動いたと思ったら、そのまま望月は体をがくがくと大きく震わせて、背を丸めるように、前のめりになって、膝から崩れる。ちょうどさっきまで座っていたクッションが望月を受け止める。その体はわずかに震えている。 「あーあ」  何が起きたか察した大橋は、わざと望月に聞こえるように呟く。望月は、伏していた顔をこちらに向け、ようやく目を合わせた。 「ごめんなさ……い…」  眼鏡を吐く息で曇らせたままの望月の顔をカメラはアップに捕えていた。そして、大橋はスマホのカメラを止めサイドテーブルに置く。

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