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第15話:
「で、二通目は?」
「えっと、三日前に届いてる」
二通目のメッセージを開き、二人でその中身をざっと目を通す。内容は、ソウとコラボ動画を撮影したいということだった。
「コラボってどういう動画なの?」
「要するに乱入動画だ」
「乱入……」
最近の黒丸は、巷で評判の投稿者と一緒にビデオチャットセックスをした動画を投稿して話題を呼んでいる。おそらく今回は、ソウがその相手として選ばれたのだろう。
「一度、話したいって言ってるな。音声チャットのIDも投げてきてる」
「それって僕が、黒丸さんとセックスするってこと?」
望月はぎゅっと大橋の服の袖を掴み、不安そうなまなざしを向ける。
「今まで実際に会った動画もあるみたいだけど、黒丸からは、音声チャットで疑似セックスするのはどうですか、と提案してきている。俺がやってるみたいに、黒丸がおまえに指示を出すってことだろう」
「……それってどうなのかな?」
総合的に判断するには、情報の整理が必要かと思う。実際、大橋の胸の内は、わからないことだらけのせいか、ざわついていた。
「まぁ、黒丸が関わった投稿者は人気が出るみたいだから、もとからこういう先見の明もあるんだろうな。まず、選ばれたことは名誉だと思っていい」
「じゃあ……受けたほうがいい?」
「いや、これはこの先、望月が動画についてどう考えるか、にも関係してくると思う。そもそもおまえの目標だったお気に入りの数、百人はすでに達成してるわけだし」
「うん……」
望月の表情が曇る。
「そういう話も、いずれしないといけないと思っていた。ソウはおまえ自身なんだ。おまえがどうしたいかによって、俺が必要ならこれからも協力するし、不要なら…」
「やめちゃうの?」
大橋を見つめる望月の表情は落胆の色に染まる。
「いや、そうじゃなくて、俺はおまえがどう考えてるか、聞きたいって話だよ」
「それは……」
みるみる顔が曇っていく望月を見ていられなくなり、大橋は隣に座っている望月の肩を引き寄せ、ゆっくりと頭を撫でた。
「そんな顔するなって。俺、別にやめるとも、協力しないとも言ってないだろ? 決めてた目標を達成したんだから、新たな目標を決めるって前向きな話だってできるんだよ。どうするかは、おまえがどうしたいかだ、って言ってるだけだって」
「うん……」
撮影で達した後に、体を震わせている望月を抱きしめたときから、撮影後はいつもそうすることが恒例になっていた。そのせいか、撮影以外でも、励ますときに望月の頭を撫でたり、嬉しいことがあったときに抱き合って喜んだり、そしてこんな風に肩を抱いたりすることも、自然にできるようになっていた。それを望月は拒むことなく、受け入れ、時には抱きしめた拍子に、大橋の背中に手をまわしてくることもあった。
ただの友達である男性同士にしては、少し過剰なスキンシップだとは思うが、外では決してやらないし、天然でどこか危なげな望月を自分が守ってやらなくては、という使命感と、純粋に愛でたいと思う気持ちから、ついつい手を伸ばしてしまう。もちろん、それ以上のことはしない。踏み越えてはいけない境界線は守っているつもりだ。
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