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第16話:

「とにかく黒丸には、詳細を聞いてから考えさせてくださいって提案しよう」 「そのあとで、受けるの?」 「いや、内容を聞いてから判断するって話だ。当たり前だけど、おまえが嫌なら受けなくていい」  望月は、わかった、と呟いて、返事を入力し始めた。  結局、そのあと撮影をしたが、望月自身、イクことはできても調子はいまひとつのようだった。きっと黒丸の件を気にしているのだろう。  望月が本調子じゃないときの動画は、お蔵入りにしたほうがいいかもしれないな、と考えながら機材を片付けていた大橋は、シャワーを浴びにいく前にメッセージをチェックしていた望月から「返事が来ている」と呼ばれ、パソコンの前に駆け寄った。  黒丸からの返事は、こちらがメッセージを送ったすぐあとに届いていたようだった。すぐに望月とメッセージの内容を確認すると、返事をくれたことについての、丁寧なお礼が述べられていた。 「チャットはいつでも大丈夫です、か」  そして詳細を聞いてから決めたいという、こちらの申し出には了承してくれた。 「ねぇ、大橋くん、僕ひとりじゃ無理だよ。そばにいて」  まだ下着一枚の望月が、大橋の腕を掴んで懇願している。 「わかった。じゃ、編集している友人も一緒にチャットに参加してもいいなら、って返事しとけ」  頷いた望月は再び画面に向かって文字を打ち始める。そして、すぐに返事が届き、二時間後に黒丸と音声チャットをすることになった。  連絡先交換を終え、いよいよ黒丸と音声で会話をするときがきた。 「じゃあ、音声つなげるね」 「おう」  大橋と望月はパソコンの前に座り、音声はスピーカーで聞こえるようにしていて、卓上マイクでこちらの音も拾えるように準備をした。 「もしもし……」 「はい! ソウさんですか? はじめまして黒丸です」  明るくハキハキとした声で挨拶が聞こえる。 「ソウです。よろしくお願いします」 「わあ、すっげぇ。動画とおんなじだ!」 「あ、はは」  明るい黒丸の反応にソウは少し、安堵した表情を浮かべる。 「隣に編集している人もいらっしゃるんですか?」  望月は、ちらりと大橋に目を向ける。 「はい、います。同席を許可していただき、ありがとうございます」  大橋が挨拶すると黒丸からの返事がなかった。聞こえなかったかな、ともう一度伝えようと口を開いた瞬間だった。 「ああ、やっぱり俺の思ったとおりだった」 「何がですか?」 「あなた、ハシさんでしょ」 「ハシさん?」  望月が繰り返した名前に大橋は聞き覚えがあった。しかしなぜ、その名前を黒丸が知っているのか。 「俺、あなたの実況動画大好きだったんですよね」

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