23 / 26

第22話:

 推測だけで、こんなことを聞くなんて、普通ならどうかしてると思う。けれど、この先、望月の方から気持ちを伝えてくれるなんて想像できないし、待っていられなかった。でも、一連の望月の行動は、自分に好意がないと辻褄が合わない。  そして、案の定、それを聞いた望月は、顔を真っ赤にして、唇をぷるぷる震わせている。違うならすぐに否定するだろう。けれど言わない。やはり、そういうことなのだ。 「わかった。もういい、言わなくていい」 「ち、違うの! あの、自分でちゃんと……言いたいから、ちょっと待っ……」 「バーカ。そんなに動揺されたら肯定してるのと同じことだろ」  あ、と小さく呟いて、望月がうつむく。 「で、いつから?」 「えっと去年くらいから……」 「な……っ」  絶句した。思ってたよりもずっと前だ。 「言えよ、早く!」 「そんなの、言えないよ……」 「おまえの恋愛対象って男だったの?」 「それが……そうじゃないって思ってたのに、よくわかんないんだけど、大橋くんのことは好きになれたっていうか」 「あー、もうっ」  目の前の望月を、ぎゅっと抱きしめる。 「あの、大橋……くん?」 「これから、その、今日に至るまでの一連の事情はゆっくり聞く。でもその前に言っておく。俺もおまえが好きだと思う」 「ふぇっ!」  腕の中の望月はすっとんきょうな声をあげた。 「太田のこと聞いたときも、おまえが黒丸とのコラボを受けたときも、マジで気分悪かった。つーか、俺、もうおまえを俺のものだと錯覚してたからかも」 「それは……言ってほしかった…」 「おまえが言うな! だいたいおまえの行動は無茶苦茶なんだよ」 「ご、ごめんなさい」 「もういいけどさ」  ぽんぽんと望月の頭を叩き、頬を寄せる。 「どこがいいんだよ、俺みたいな男」  それは一番聞いてみたかったところだ。 「えっと、その……大橋くんはいつもみんなに好かれてて、僕なんか、全然近寄れなくて、遠くから見つめるだけで十分だった。同期会で一緒になるたびに、かっこいいなって思ってたし……だからこないだ動画の話ができたから、編集を教えてほしいって、ちょっと勇気を出して言ってみたんだ」 「マジで? やば、なんか嬉しい」  もしかして、ちゃんと出席してくれたのは、大橋が幹事をしていたからだったとしたら、想像するだけで、顔がにやついてしまう。 「そっか、俺のことずっと見ててくれたのか」 「うん……だから、こうして仲良くなれたのが嬉しくて、ずっと今が続けばいいのにって思ってた」  目標を達成しても今後の話をしなかったのは、そういう理由もあったのだろう。徐々に望月の行動の謎が紐解かれていく。  望月の手が大橋の背中に回され、二人は一層強く抱き合った。 「大橋くんこそ、なんで僕みたいな男……」 「もうこの際だから言うけど、二回目の撮影のあと、俺、おまえで勃起した」 「えっ、僕で?」  望月は慌てて、大橋の顔を見る。 「他の男じゃ勃たないから男なら誰でもいいわけじゃない。でも、俺、おまえで抜いたことは断じてないから!」  それは公私混同してはいけないと線を引いていたのだから、はっきり伝えておきたい。 「それは僕に魅力がないということでは……」 「バカ! どれだけ俺が我慢したと思ってんだよ!」  思わず声を荒げると、望月はびくっと怯え、驚いた顔をする。 「ずっとおまえのこと触りたかった。ある意味、拷問だっつーの」 「本当に……?」  望月の瞳は戸惑いからなのか、震えているが、その声は嬉しそうに弾んでいる。

ともだちにシェアしよう!