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第23話:
「つーか、ホント、俺、撮影が終わっておまえ抱きながら我慢してたのに、それも知らないだろ?」
「……我慢しなくていいのに」
「そんなこと言うと、マジで襲うぞ」
冗談ぽく言ったのに、望月は黙って俯いた。
「え……マジで?」
「だって、好きな人とはしたいんだもん!」
「もうおまえ、本当、大胆っていうか……あー、もう!」
腕の中の望月ごと、ベッドに押し倒すと、望月の顔が目の前に迫る。その表情は、恥ずかしがりながらも、期待している顔だ。
「キスとか、していい?」
「いちいち聞かなくていいし、キスから先も、その、どうぞ……」
「なんだよ、それ」
律儀にどうぞ、と言われ、ぷは、と吹き出してしまう。けど目の前の望月はもう目を瞑っていた。長い睫毛は小さく揺れている。大橋は望月の顎を片手で掴み、ちゅ、と唇を合わせた。触れた唇は女性と変わらない柔らかさだった。あまりにも気持ちよくて再び唇を重ねる。
今、自分は男とキスをしている。数ヶ月前までは、男なんて恋愛対象に考えられなかったはずなのに、気づけばいつでも望月のことを考えていたし、望月と過ごす週末を楽しみにしていたし、望月のいやらしい姿を見て興奮した。自分の体はとっくに望月を恋愛対象として認めていたのだ。
自分が組み敷いているのは動画の中のソウではない。会社で同期のスーツ姿の望月だ。自分はソウではなく望月に、ちゃんと欲情している。
「マジで、この先もしていいの? こんなに展開早くて大丈夫?」
「僕だって、勇気出してるつもりだよ」
確かに、望月にしては積極的だ。さっきから煽られてばかりいる。
「それに、大橋くんの気が変わったら困るし」
「そんなこと気にしてたのかよ。普通、両思いだってわかって、即ヤッたら嫌われない?」
「それは、女の子の話でしょ」
明らかに目の前の望月が不機嫌な言い方になる。
「そこはさ、今まで女性としか経験がないんだから、大目に見てほしいんだけど」
「僕、童貞だからよくわかんない」
ぷい、とふくれっつらの望月は顏を背ける。そんなかわいい顏をされたらこっちが困る。
「そっか、童貞……なぁ、俺、おまえのそれ、これからも女に使わせる気ないけど、大丈夫?」
自分と付き合うということは、挿入される側、すなわちネコになるってことだ。
「いいよ。そもそも、僕が誰かを抱くなんて想像できないし」
「じゃ、俺はおまえの処女もらうけど、いいんだな?」
望月は、頬を赤らめ、恥ずかしそうに頷いた。
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