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第24話:

「大橋くん……もう大丈夫だって……あっんんっ」 「だめ。もっと馴らしておかないと。ここでセックスするんだから」  生まれたままの姿でベッドの上に四つん這いの姿勢になった望月の、その後ろの穴には、ローションでべたべたになった大橋の指が四本埋め込まれており、その指が動くたびに望月の中はきゅうきゅうと締め付けてくる。初めて指を挿れたのに、気持ちいい場所がわかる気がするのは、今までオナニーで感じている望月を見てきたせいだろうか。  でも、この場所を開発した場所したのは自分ではない。そう思うと気持ちがざわついてしまう。 「あいつもここ触ったんだろ」 「一回、だけだって…んっ……あっ、いや……」  太田は少なからず望月に好意があったんだろうと思う。そうじゃなければ、ただの上司が部下の大事な秘穴を開発するなんてことありえない。はっきり言って、いい気分じゃない。確かに自分だって女を抱いたことはある。けれど、太田は今でも望月の上司で、身近にいる。いつ、また望月に手を出してくるか、わからないのは気が気じゃない。 「いやらしいな望月。そのエッチな顔も見せたのか」 「いやぁっ……っ!」  一番敏感だと思われる場所を指で擦るように触れば、望月は背をのけ反らせて、甲高い啼き声を漏らす。潤んだ瞳はまるで、許してと哀願するようだった。泣かせたいわけじゃない、 「でも、指を挿れるのが、その、気持ちいいことは、わかったんだけど、やっぱり、その先は好きな人じゃないと嫌だなって思ったから……」 「それって俺のこと?」  肩越しに振り返っている望月はこくんと小さく頷く。 「じゃあ、ここは俺だけの場所にして?」 「うん……大橋くんにしか触らせたくないよ…」    恥ずかしそうに小さな声で呟いた望月の背中にキスを落とす。 「今度、太田が近づいて来たときは、絶対、断ってくれ。襲われそうになったら俺を呼べ。俺がおまえを守るから」 「うん……」 いつもレンズごしにしか見たことのなかった望月の肌は実際に触ってみるとすべすべして柔らかかった。たくさん触りたかったし、キスもしたかった。それが今は許される。  望月の体を優しく起こして、腕の中に引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。 「これからは、俺がもっとおまえを気持ちよくさせてやるから」 「うん。大橋くんが、いい」 「俺、初めておまえの体触ったけど、なんか知り尽くしてる気がする。ここ、好きだろ」    すでに緩く勃ちあがってる望月のそれを親指の先でひっかくように擦る。 「えっ、あっ……いや、そこ!」 「動画見ててわかってた。後ろと一緒だと、たまんないんだろ?」  望月の双丘を抱きかかえるようにして指を再び奥の蕾にくぷ、と滑りこませ、奥と探る。 「ああっ……いやァ! 感じすぎちゃ……」 「ははは。俺の指、すっげぇ締め付けてくる。こんなに締め付けられたら、俺、すぐ出しちゃうぞ」 「ね、今度は僕が、大橋くんの触りたい」 「ん、じゃ脱がせて」  望月は、スーツを脱いでボクサーパンツ1枚になっていた大橋の前に膝立ちになり、下着のゴムの部分をゆっくりとおろし始める。いやらしい望月をずっと見ていたせいで、ガチガチになった下半身が下着をひっかけている。  大橋が望月の手に自分の手を添えて、下着を引き下ろすと、ぶる、と上をむいたそれが望月の目の前に現れた。 「大橋くんの、本当に……大きい」 「まぁ、な。ったく、小島が余計なことを」  そういえば小島が大橋は巨根だとバラされた同期会に望月もいたのだった。 「ちょっと人より大きいけど、その、望月の好きにしていいからさ」 「え、じゃあ、舐めたい……」 「それは、また今度にしてもらっていい? 今日は耐えられなさそう」 「う……」 「じゃ、ちょっとだけ触って」  望月はそっと両手で大橋のそれを包むこむように握る。自分よりも小さめな手がたどたどしくそれを撫でるように上下に動かしている。あのかわいらしい望月にこんな卑猥なものを触らせているというだけで、すでに禁忌を犯したような気分になってしまう。  もし望月の小さな口でそれを含まれたら、きっと5秒も持たないだろう。 「望月、強く握って、しごいて」 「こう……?」 「う、あっ、あ、だめ、やっぱだめ」  爆発しそうになるのをなんとか耐えようと唇で望月の唇を塞ぐ。舌をねじこむと、望月はちゃんと舌でそれに応えてくれる。くちゅくちゅ、と卑猥な水音が部屋に響く。  キスも気持ちいいし、望月の手が触れているところもたまらない。望月もまたキスだけで感じているのか、時折、吐息を漏らす。撮影しているときから、望月はきっと敏感な体質なのだろうと気づいていた。自分で自分を触りながら動画の中で喘ぐ姿は、本当にいやらしかったからだ。  でも今は、自分が望月を感じさせている。もうこんなところは誰にも見せたくない。 「ね、早く、大橋くんのこれ、挿れてみたい」 「煽るなって、マジで、もたねぇから」 「だって、大橋くんとエッチするとか、夢みたいで、夢だったらどうしようって」 「おまえは……ああ、もう本当に無自覚で、怖いよ」  大橋は額にキスをして、望月の体をゆっくり押し倒した。その両膝を抱えるように引き寄せ、すっかりふやけた望月の蕾に、自分の昂ぶりを押し当てた。 「あっ…すごい、かたいね……」 「これから、おまえの中に挿れるけど、なるべくゆっくりするから」 「んっ…」  こくこくと頷く望月を見届けて、大橋はゆっくりと腰を押し進めた。たっぷりと時間をかけてほぐしただけあって、その中は柔らかくなっており、大橋のそれを包み込むような温かさだった。 「やべ……あったかくて気持ちいい……」 「大橋、く……ん!」 「痛くないか? ん?」  望月は、首をぶんぶんと横に振る。本当に痛がってはいないようだ。 「どうしよ、すごいの……気持ちいいの…」 「マジで? 癖になっちゃったりしてな」 「もっと、その、激しく動かしてみて」  大橋の耳元で囁かれた言葉は、大橋の引き金を勢いよく引き、欲望をせき止めていた理性を決壊させた。ただ、欲望のままに腰を穿った。その間も、望月は痛がることなく、大橋にしがみついて、快感に溺れていた。 「望月、好きだ……っ!」 「僕も、大橋くん、好き…」  二人はひとつになって、抱きしめ合って、たくさんキスをして、愛を囁き合った。もっともっと、と望月がねだるのがかわいくて、大橋は何度も何度も体を繋げた。そして何度も最中に思った。 (おまえのこんな顔、本当に、誰にも見せたくねぇわ) ***  望月の匂いのするベッドで目を覚ます。  隣に望月はいなかったけれど、味噌汁の匂いがして、朝食の準備をしてくれているんだとすぐにわかって身体を起こす。 「起こしちゃった?」  大橋が起きた気配を感じたのか、ワイシャツ姿の望月がベッドに近づいてくる。 「俺ら、あのまま寝ちゃったのか」 「うん。でも、まだ朝早いから大丈夫」  ベッドの脇にしゃがんだ望月は笑顔で大橋を見つめている。そういえば、望月と恋人になって、昨夜、ここで愛し合ったことを思い出す。となれば、自分たちの関係は一歩進んだことになると思っていいのだろうか。 「よかった」 「何が?」 「起きたら隣に大橋くんがいたから、夢じゃなかったんだって安心した」 「朝からかわいいな、俺の恋人は」 「こ、恋人!?」  目の前で、ぽんっと一気に顔を赤らんでいくのを見て、思わず顔が緩む。 「違うの?」 「違わない……けど、その、いいのかな。僕なんかで」 「おまえがいいんだよ」  思わずその頭に手を伸ばして引き寄せて、自分の胸に押し付ける。  今はこいつを守るためならなんだってしたい。そう思うくらい望月に夢中だ。 「あのね、僕が大橋くんを好きなのは事実だけど、大橋くんは今までと一緒でもいいんだよ」 「どういうこと?」  頭を撫でながら聞く。 「だって僕は、もともとみんなに優しい大橋くんのことを好きになったし、特別扱いしてくれなくても、僕を好きって言ってくれたあの言葉だけで、もう思い出して幸せになれるっていうか……うわっ」  話の途中だった望月の身体ごと、強引に押し倒した。 「大橋くん!?」 「あのな、もう俺が無理なの。俺には、こんなにかわいい恋人がいるってことを早くみんなに自慢したいし、望月のことも、もっと知りたい。ダメか?」 「ダメじゃない……。その、無理しなくていいからね」  「俺がしたいの」  顔を近づけると、望月はちゃんとキスに応じてくれる。昨日、たくさんキスをしたはずなのに、もっとしたい。すべての時間を望月と一緒にいたい。  今なら友達よりも何よりも、望月を優先したいと思う。そういえば、動画撮影があるから、と友達の誘いを断っていたことを思い出す。今までもちゃんと望月のことを最優先にしていた自分に気づいた。 「そうだ。小島におまえのこと、紹介しよう」 「え、なんで?」 「俺が嫉妬心むき出しにして、好きになる相手を見たいって言ってたから」 「嫉妬って……僕に?」  望月はまんまるの漆黒の瞳をぱちぱちと瞬かせる。 「おまえが黒丸とのコラボを受け入れたの、マジで腹が立ったし、今ごろ撮影してるんだなぁって思ったら、何をしてても落ち着かなかった。思えば、あれって嫉妬だったんだなぁって」 「そんなの、僕だって嫌だったよ。たとえチャット越しだって、好きな人とするほうがいいもん」 「そう思ってたなら引き受けるなよ。撮影で勃たなかったらどうすんの、黒丸にも悪いだろ」 「笑ってた……」 「え、本当に勃たなかったのか?」  驚いて、腕の中の望月の顏をのぞきこもうとするが、恥ずかしいのか顏を逸らされた。 「その、いざ撮影が始まって黒丸さんにいやらしい言葉をかけられて、指示通り触ったんだけど、僕、全然応しなくて……その、何か他のこと考えてるでしょって言われて、撮影は結局、中止になったんだ」 「全然反応しない? いつもすぐに反応するくせに?」  望月はこくりと頷く。そんなことあるんだろうか。 「それは黒丸に謝らなきゃないけないな」 「うん」 「でも悪いけど、もうソウは引退な」 「それは、僕も、そのほうがいいと思った……」 「もう世界中の誰にも、おまえのあんな姿を見せたくない」  大橋は望月をまっすぐ見つめて言葉を続ける。 「毎日オナニーする暇ないくらいに、俺が相手すればいいだろ?」 「そ、それは……嬉しいかも」  てっきり恥ずかしがるのかと思ったら、望月は嬉しそうだった。まるで「抱っこ」をねだるように大橋に両手を伸ばしてくるので、身体をゆっくりと委ねる。恥ずかしがり屋のようで、こうして時々大胆なところは、まるで小悪魔だ。  沈まれ、俺の欲望、と大橋は自身に言い聞かせる。もう恋人なんだから、我慢しなくてもいいのか、いや、これから会社だし、と脳内で葛藤していた大橋だが「あっ、ご飯さめちゃう」とあっさりベッドを出て行った望月の、いつもと変わらないマイペースな天然ぶりに苦笑するしかなかった。

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