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今日からここを離れて郁也さんと暮らす。一人になって改めてそのことを考えると、緊張に身体が強張る。 自信があるわけではない家事と、加えて初めての他人との同居。上手くやれるだろうかという不安が胸をざわつかせ、俯きそうになって慌てて上を向いた。 やるしかない。サインを書いて、判子も押した。それに、今の仕事も最初は不安だらけで失敗もあったが、それでも続いている。まずはやるしかないんだ。 そこで一つ、嫌なことに気づく。今まで郁也さんに言われなかったのと、目の前の事で精一杯で失念していたが……家政婦をやるに至って親の同意は必要ないのだろうか。 渡された契約書に親の同意が必要な旨はなく、郁也さんも何も言わなかった。歳も十八歳だが、仕事によってはやはり親は同意しているのかと尋ねられる事もある。実際、今働いている居酒屋のバイトではあったのだ。 時間帯が深夜を過ぎる事や、過去に働いていた大学生になりたての人の親が、バイトの許可をしてないと怒鳴り込んで急に辞められた事もあり確認をしているとの事だった。 笑いながら話した店長の話では勿論、歳が法律的に問題ない事もあり求めていない所が大半だが、歳に関係なく学生だと親が出てくることも稀ではなく、一応確認しているとの事だった。 住み込みの家政婦となれば、深夜関係なく一日中だ。もし、親の同意を求められたらどうしよう。 「……嫌だ」 会いたくない。 忙しいとあからさまに嫌な顔をする、唯一の肉親である父親に頭を下げて大学や引っ越し、仕事など、必要な書類に同意を貰い、苦痛でしかない時間を耐えてようやく実家を出たのだ。もう二度と会いたくはない。 それは俺だけじゃないだろう。現に、一度たりとも連絡が来たことはない。 「待たせてすまない」 脳裏を蘇りそうになった姿を郁也さんの声が掻き消す。不意打ちにドキリとした。

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