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「親の同意は……必要ですか?」
どうか必要がないと言ってほしい。
ぎゅっとズボンの上で握った手に力がこもる。親という存在を考えるとどうしても潔くなれない。
「保護者同意についてだが」
「……っ」
どんよりとした気持ちに、続くかもしれない言葉への不安が圧し掛かるようだ。
「密の年齢が法律的に保護者同意が必要ない年齢に達している事や、それ以上に最初から俺は密以外に何かを求める気はない。密が構わないなら、なくても構わない。密への保証は、弁護士を通して全て約束する」
予想外に返ってきた言葉に、空耳かと思った。
思わず郁也さんを見つめて、呆然としてしまう。
「……いいんですか?」
「構わない。不安か?」
瞬時に、激しく首を振った。不安なわけがない。
不安なのは、もしかしたら訪れる可能性もあった先だ。
要らないという言葉が頭の中で何度も繰り返し流れて、遅れてやってきた安堵に小さなため息が零れ出た。
だがすぐに、無意識とはいえ零してしまったため息に慌てる。これでは不満に思っていると思われるかもしれない。
伺うように郁也さんを見るが、不思議と郁也さんは何も言わない。
……もしかしたら、知らない振りをしてくれているのかもしれない。なんとなく、そんな気がした。
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