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「ありがとうございます」
車を降りて、郁也さんについて駐車場を出る。明るい時間帯のこともあり、間近で見るマンションは息を呑むぐらい迫力があった。
「どうかしたか?」
思わず立ち止まった俺を郁也さんが振り返る。俺は慌てて首を振る。
中に入る郁也さんに、緊張に身体を強張らせながら俺も恐る恐る続く。
「すごい……」
大理石で出来ているんだろうか。天井から降り注ぐ照明でピカピカに輝く石床に、広々とした空間。
しかも正面にはどこかのホテルのように受付のようなスペースに、スーツで身綺麗にした女性がいて、郁也さんに向って微笑むと会釈する。
「お帰りなさいませ、井坂様」
こ、これはまさか噂に聞くマンションコンシェルジュという職業の方ではないでしょうか。
そういう職業があるとは聞いたことがあるが、まさか目にする機会があるなんて思わなかった……。
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