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それからはキッチンやお風呂などそれぞれの場所や備品などの案内や説明をしてもらい、やはり言うまでもなく完璧だった。 しかも加えて、郁也さんの住居スペースは最上階全てで、郁也さん以外には住んでいないらしい。通りで広すぎると思ったんだ。 必要な説明等も聞き終わり、夕食までまだ早いということで、それまでは休むことになりベッドにぼすんと背中から沈み込む。 「柔らかい……」 触るだけで眠気を誘いそうな柔らかで心地の良いシーツは優しい香りがする。 「……夢みたいだ」 このまま眠って目を覚ませば、本当はあのアパートなんじゃないかと思うぐらい現実感がない。 うとうとと眠気が深くなっている気がする。 徐々に下がっていく瞼を、抗えずに閉じる。 「もう一人じゃないんだな……」 一人は寂しい。空虚で、ふと虚しくなる時がある。 必要だと、強く求められたのは初めてだ。 郁也さんの言葉は泣きそうなくらい心地よくて、恐いくらいに胸に深く沁み込んでいる。

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