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「密は本当に可愛いな。俺は君と過ごすほど、君が可愛くて仕方がない」 「郁也さん......!」 優しく抱きしめられ、狼狽えてしまう。今は周囲に人はいないが、すぐ近くにはお店があるのだ。人に見られる可能性は大いにある。 早く離れなければいけないと焦るが、郁也さんを突き飛ばせるわけもなくて、意識しないように必死に耐えるしかない。 「外は寒いので、お店に入りましょう」 正直なところ込み上げる恥ずかしさに身体が熱くて寒さなんて全く気にならない。 だけどそろそろ離して欲しくて慌てて考えた理由を告げれば、郁也さんは納得してくれたようだった。俺に謝ると身体を離してくれる。 「密の事になると他がどうでも良くなってしまうな」 解放されたことに内心安堵しようとした時、タイミング良く告げられた言葉にようやく落ち着こうとした鼓動が飛び跳ねる。 お願いだから、心臓に悪い言葉はやめてほしい……。 「行こう」 言葉に窮していれば、井坂さんに手を取られる。頷いて店内へと足を踏み入れた。

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