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奥宮さんは一瞬きょとんとした顔で首を傾げるが、すぐに何か察したように大丈夫だよと慰めの言葉を掛けてくれる。 「佐々木君は一生懸命で頑張り屋さんだからすぐに良い人見つかるよ。俺が保証する。それに、この間もプロポーズされたんだから自信出して」 きっと亜門さんから話を聞いたのだろう。まさかあの場にいなかった奥宮さんからプロポーズの話題が出るとは思わなくて、ビクリと反応してしまう。 どう返事をしたらいいか言葉に詰まって困惑するが、ふとある事に気づいてそっちに驚いてしまう。 「奥宮さん、相手は男性なんですが……」 同性愛に抵抗があるわけではないが、一般的でないのは確かだ。一応聞き返してみれば、奥宮さんは笑顔で「そうだね」と頷く。 「大丈夫だよ。本当に好きになったら性別なんて気にならないよ。それに、一番は愛してもらえるかだから」 一瞬、奥宮さんの雰囲気から艶のようなものを感じてドキリとなる。 愛しているかじゃなくて、愛してもらえるかと言った奥宮さんに共感してしまった。愛していても、愛されなきゃ意味がない。 明るく、誰からも好かれそうな奥宮さんの言葉としては意外だった。 「流星、嬉しいけどジャケット濡れちゃうよ」 いつの間にか消えていた亜門さんが厚手のジャケットを持ってきていて、それを強引に奥宮さんの体に被せる。いつも見ている亜門さんのジャケットだ。 亜門さんは睨むようにじっと奥宮さんを見ていて、それに対して奥宮さんは分かってる、大丈夫だってと、一方的な不思議な会話をしている。 二人はいつもそうだった。奥宮さんは亜門さんを見るだけで全部察して、奥宮さんがいる時は普段以上に亜門さんは話さない。無言で仕事をしている。だから、今も二人は言葉なく通じているのだ。 「騒がしくしてごめんね。俺身体があまり丈夫じゃないから風邪引きやすくて、よく流星に怒られるんだよね」 「大丈夫ですか?」 亜門さんの態度が理解できて、奥宮さんが心配になる。暖房が効いていて店内は温かいが、それでも濡れていても大丈夫とは言えない。 「早く帰れ」 大丈夫と言おうとした奥宮さんの言葉を、亜門さんが低く冷たい声で遮る。亜門さんは見るからに不機嫌で、声をかけるのも憚れる。

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