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もし辛くなったら気兼ねなく言ってほしい、とまで言ってくれる風宮さんの優しさには感心するばかりだ。 「こんなにもいい子で可愛い家政婦さんに面倒を見てもらえている郁也が羨ましいよ。私は郁也とは幼馴染なんだ。だから、郁也から家政婦の話を聞いた時は驚いたよ」 「俺もです。まさか郁也さんのような人にプロでもないのに雇ってもらえるとは思ってもいなくて驚きました」 幼馴染と聞いて、郁也さんに対する風宮さんの親しみのある呼び方にも納得する。共感できる話に大きく頷く。 「郁也の食生活には驚いただろう?昔から実直な男でね、関心がない事には周囲の人間を呆れさせることもあるぐらい淡泊だから佐々木君に面倒を掛けることも多いだろう?」 郁也さん自身が語ってくれた内容と風宮さんの話が合致して、思わず苦笑してしまう。だが、そんなところも郁也さんらしく愛おしいと思う。 それに、郁也さんに面倒を掛けられたこともない。もっとお世話をさせてもらえなければ給料泥棒と罵られてもいいぐらいだ。 「とんでもないです。郁也さんには本当によくして頂いて感謝してます」 「それなら良かった。郁也から聞いている通り、私は郁也だけでなく佐々木君の保証も兼ねている。私生活はともかく、仕事に対しては完璧で真面目な郁也の事だから問題はないと思うけど、もし雇用に対する不満や不便があったら気兼ねなく相談していいからね。勿論、郁也個人に関しても」 「ありがとうございます」 家政婦の仕事に対する不満で相談する事はないだろうが、幼馴染で郁也さんの事をよく知っている風宮さんにいざという時に郁也さんの事で相談に乗ってもらえるのは心強い。 風宮さんの口調からは郁也さんに対する親しみと信頼を感じる。風宮さんも、本気で俺が仕事に対する不満を相談するとは思っていないだろう。

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