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「密で遊ぶな。それ以上はたとえお前でも容赦しない」 予想外の声に驚いていれば、風宮さんが後ろへと引き離され、いつの間にか帰宅していた郁也さんに守るように抱きしめられる。嗅ぎ慣れた優しい匂いと逞しい腕に思わず安堵するが、不意に風宮さんの視線に気づいて羞恥心に全身が熱くなる。 狼狽えながらも顔を上げれば、郁也さんは真剣な眼差しで風宮さんを咎めるように睨んでいて、対して風宮さんはごめんと謝りながらも楽し気に笑っている。 「ごめんね佐々木君。佐々木君の反応が、郁也の弟の陸に似ていたから、つい調子に乗ってしまった」 「だ、大丈夫です」 前に郁也さんから聞いた弟さんの存在を思い出して納得する。最初から本気ではないことは理解していたが、明確に揶揄われていたのだと知って少し安堵してしまう。 それよりも、何故この場に郁也さんがいるのかが疑問だった。今朝風宮さんの事を聞いた時は帰宅すると言っていなかったが、多忙な仕事の合間を縫ってくれたのだろうか。 すると、俺の疑問を先に風宮さんが訊いてくれる。 「仕事はいいのかい郁也?」 「ああ。今日は午前中に必要な仕事は終わらせ、午後には休みをとった。伝えていなくてすまない」 最後の言葉で俺を見る郁也さんに首を振る。多忙な郁也さんといられる時間は僅かであろうと貴重だ。今から一緒にいられるのだと嬉しい。 風宮さんの前だと分かっていても思わず顔が緩んでしまう。すると、郁也さんにじっと見つめられ首を傾げれば、突然ぎゅっと抱きしめられ鼓動が早鳴る。羞恥心に真っ赤になりながらおろおろと狼狽える。 「い、郁也さん……!?」 「すまない密。俺は君の事になると狭量な人間になる。そんな可愛い顔をするのは二人きりの時だけにしてほしい。こんなにも愛おしい姿をたとえ相手が彰だろうが見せたくない」 「……っ!!」 真剣な声で囁かれる甘い言葉の濃密さに火がついたように全身が熱くなってクラクラと眩暈がする。

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