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「おかえりなさい郁也さん」 熱い顔に恥じらいながらも返せば、髪を優しく撫でられ、くすぐったい感触に頭の中が綿菓子のようにふわふわとする。 「好きだ密」 再びキスをされる中、このまままるでアイスのように蕩けてしまうのではないかと思うぐらい身体が熱い。 「……午後はお休みという事は……、その、このまま一緒にいてもらえるんでしょうか……?」 幸せすぎて夢を見ているのではないかと疑いそうになる。少し不安になり恐る恐る確認してみれば、郁也さんは目を見開いたかと思うと柔らかな笑みを浮かべた。そのあまりの甘さに鼓動が破裂しそうなほど高鳴ってしまう。 キスをされ、だがすぐに離れることはなく、長くゆっくりと甘い感触に身体が痺れるような感覚がした。 「ああ。今日はもう離れることはない。密と過ごすつもりだ」 良かったと。安堵と幸福感が心の底から込み上げる。滅多にない機会に恵まれた事や、なにより郁也さんが俺の望みに応えてくれた事に感謝する。 「嬉しいです」 素直に自分の想いを告げるのは恥ずかしかったが、それでも嬉しさの方が勝って思ったよりもすんなりと声になる。 「今日、マンションコンシェルジュの羽部さんからクッキーを頂いたんです。紅茶も淹れたので、一緒に食べませんか?」 「ああ、勿論だ」 「すぐに用意しますね」 郁也さんから離れようとするが、何故か離してくれる気配がなく戸惑う。どうしたのかと思い首を傾げて郁也さんを見る。 すると、すまないと郁也さんに謝られた。

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