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「放さないといけないと理解しているんだが、密が愛おしすぎて名残惜しく思ってしまう。恋人になれたばかりもあり、多幸感に舞い上がっているのもあるかもしれない」 「……っ!!」 強烈な不意打ちに、心臓が壊れてしまうんじゃないかと思った。頭の中が沸騰していて、身体からは湯気が出そうだった。 クラクラと眩暈がする。熱く甘い瞳に羞恥心が耐え切れず、目を伏せて視線を泳がせてしまう。 「もう少しだけこのままではだめだろうか?」 一瞬淹れたばかりの紅茶の存在が脳裏を過るが、甘くお願いされて断れる筈もなかった。 頷いてキスをされながら、しばらくの間ずっと郁也さんに抱きしめられたまま胸を満たす幸せを噛みしめていた。 それから、まるで心を見透かされたように名残惜し気に身体を放され、淹れなおした紅茶と羽部さんのクッキーを郁也さんとソファーで身を寄せ合わせて食べていた。 サクサクのバター生地とチョコチップがとても美味しく、紅茶とも相性が良くて飽きることなく食べ進めてしまう。 「コンシェルジュとの関係が良好なようで安心した」 「はい。仲良くして頂いてます。羽部さんはとってもお菓子作りが上手で優しい方です」 郁也さんは穏やかに頷いて話に耳を傾けてくれる。

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