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第4章 red ranunculus ~赤いラナンキュラス~
今年の秋、僕は裏庭で昼食をとっていた。
ハラハラと落ちる紅葉を見ながらの昼食はとても心が落ち着く。
日頃の疲れを紅葉と共に落としてくれる気がした。
…それにしても、結局倒れた僕を運んでくれたのは誰だったのだろう。 図鑑もまだ持ち主が見つかってない。
(出来ればお返ししたいのに…)
いい迷惑かもしれないけど、一方的に助けてもらうばかりにはしたくない。
きっとクラスの誰かに聞けば、運んでくれた人なんて一瞬で分かるだろう。しかし、そんな勇気は出ず、いつの間にか秋になっていた。
「…あれ〜夏喜くん!どうしたの、こんなとこで?」
……え?
「本当だ!何してるの?……ってうゎ、羽野いんじゃん」
「えっ?まさか、羽野に用があるの?」
女の子達の視線が僕を突き刺す。
思わず、食べていたパンを鞄に突っ込むと、河木くん達の横を通り過ぎようとした。
「……っあのさ!」
完全に通りすぎようとする前に河木くんが僕の肩を掴む。
心臓がドクンとはねた。
咄嗟に、掴んだ腕を振り払う。
「ごめんなさい」と小さく呟き、僕はそのまま走って古い校舎の方まで逃げ去った。
逃げる時、後ろからは「何あれ!感じわる〜」「そんなことより、文化祭はさぁ〜」という女の子達の声だけが聞こえてきた。
古い校舎に辿り着くと一気に色んな感情がなだれこんでくる。
(やっぱり、嫌われただろうか…河木くんだけには、嫌われたくなかったのに……)
女の子達の声が頭の中でリピートする。
それと同時に、掴まれた肩がジンジンと暑い…
なぜ、あの場所に河木くんはいたのだろう。
肩を掴んだあの時、河木くんは僕になんて言おうとしたのだろう。
きっと、僕じゃない他に用があって裏庭にきたに違いない。
そして、「お前に用があるわけじゃない」って伝えようとしたのだろう、
それか優しい河木くんは「違うから、安心して?」と優しく訂正しようとしていたのかもしれない
………優しく言われた方が、辛いなぁ
結局、どちらの言葉も聞きたくなかったから逃げ出してきたんだけどね…
「……自分が嫌になる。」
そう一言呟くと、僕は何となしに近くにあった教室の中へ入っていった。
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