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「あ、冬麻くん!」
「………え?」
突然名前を呼ばれて振り向くと…
周りから視線を浴び、こちらに向かってニコッと微笑む風隼さんがいた。
「えっ、どっ…どうして……」
風隼さんは基本この校舎にはいない。
風隼さんを見かけるのは放課後に河木くんと下校している時ぐらいで、他はあの古い校舎にいるのだろう。
僕はもちろん、周りの皆もびっくりしていた。
「ん〜?冬麻くんがなかなか会いに来てくれないから、こっちから来ちゃった」
そう言うと風隼さんは僕の頭をふわっと撫でる
思わず顔を横に向けた。
周りがざわついている
「どうしてあの2人が?」「え…どういう関係なの」 「意味わかんないんだけど……」
など、沢山の声が耳に届いてきた。
…やばい、離れなきゃ
「えっと……こ、これから…授業なんで……」
ぺこりと一回お辞儀をすると、そのまま早歩きで廊下を歩き出す。
早く風隼さんから離れなければと、人混みに逃げるが
「ちょっと待ってよ」
直ぐに風隼さんに腕を掴まれ、
「俺と一緒にいたくないの?」
なんて上目遣いで言われてしまった。
思わず一瞬躊躇いそうになる。
せっかくの人混みも、風隼さんが来たことで皆から軽く距離が出来てしまった。
「い、いや…そう言う…問題じゃ………」
「じゃあ、なんで?」
「じゅ、授業が……あ、あります………し」
「そんなの、賢い冬麻くんになら1回サボったって先生成績下げないよ」
「い、いや……そんな……こと」
腕を更に強く掴まれ、逃げられそうにない…
周りからの視線が更に強くなる。
「………おい」
僕の後ろから、誰かの声と共に腕がスっと伸びてくる。
そしてそのまま、僕の手を掴む風隼さんの手を引き剥がした。
「あら、これはこれは…夏喜王子ではないですか」
……え!?
風隼さんの言葉に、思わず後ろを振り向いてしまう。
そこには、風隼さんの言った通り、少し怖い顔した河木くんが立っていた。
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