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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「はぁはぁ…」
ほぼ全員が同時に美術室にたどり着く。
乱れきった息を整えるのに皆必死だった。
僕もいつもは走らないペースで走ったからか、冬なのにじわっと汗をかいている。
(いや……)
いや、これは河木くんのペースで走ったからかいた汗ではない。
(手…)
暖かい手が冷たい僕の手を強く握りしめていたからだ。
今の自分の状況を急に思い出し、恥ずかしくなる。顔から火が出そうだった。
(うわあぁぁぁ……今…手繋いでる……)
到着した今でも手を離さないのは忘れているからなのか……自分がいま、どういう対応をしたらいいのか分からなくなる。
どうしよう、どうしよう…と心の中で慌てふためくと河木くんが手をスルッと離した。
(あっ………)
少しだけ寂しい衝動に駆られる。
手を離すのは当たり前のことだ、むしろそのまま手を繋いでいた方が明らかにおかしいだろう。
それに、手を繋いでいる所を他の人に見られたらまずい。
とは思ってみたものの……
(もっと、繋いでいたかったな…)
なんて思ってしまう恋心はどうか、許して欲しい。
前に立つ美術の先生はほぼ全員が遅刻してきたことに怒っている。
成績の心配があったが、これだけ全員が遅れてくるとさすがに遅刻をつけることも面倒臭いらしく…美術の先生はそのまま授業を始めた。
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