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「あ、あの…なんで、中庭に…いたん、ですか?」 また、考え込みそうになる俺を他所に羽野が俯きながらそんなことを言う。 俯くその姿からはどこか、不安そうな影が見えた。 「謝らなくちゃと思って…」 俺の言葉に羽野が顔を上げる。 (今、悲しませてるよな…羽野を) 見上げたその顔からは相変わらず表情が読み取れない。 分厚い眼鏡に長い前髪は羽野の心の中を隠そうと…必死に守っているように見えた。 けれども、何となく分かる。 羽野が今どういう気持ちなのか、嬉しいのか悲しいのか、怒っているのか苦しいのか… 怒ってるとこなんて見たことないんだけどね。 たぶん今は、悲しいのと苦しいなんだろう。 もっともっと羽野の細かい気持ちが読み取れたら…組み取れたら良いのに 身勝手かもしれない、けど…羽野の苦しい気持ちや悲しい気持ちは助けてあげたいと思った。 そして…もっともっと、楽しかったり嬉しかった時の羽野を…笑顔を見たいとも思った。 「なんで…、かっ河木くん…が、あ、謝るん…です、か?」 羽野の言葉が震えている。 いつもそう、羽野は第三者の誰かがいると吃りはするが、震えたりなどはしない。蓮や先生など仲のいい奴に限るけど… (2人っきりだったら、震えんだよな…) だいぶマシにはなったと思う。 初めはほんとに、目も合わせてくれなかったから。 それに比べたら全然…だけど (…悔しいなぁ) もっと羽野に近づきたいのに、もっと仲良くなりたいのに…焦りは禁物だって分かってる。 ゆっくり羽野と向き合っていけばいいって、羽野のペースがあるんだって…けど、 「蓮に聞いたよ?サッカー部の奴らが羽野に対して酷いこと言ったって…あと、陽斗からも」 知らない間に陽斗とも距離を縮めている。 それも、俺よりも近い距離に… 少しだけ焼けた。

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