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(夏喜side) ……誰だ、この人… 突然耳に届いた羽野の名前を呼ぶ声。 透き通っていて、美しい…心地よいほどに落ち着いた、静かな声に俺は視線を向けた。 そこには少しだけ驚いたような顔をみせる、青のインナーカラーをした黒髪の男。 羽野をじっと見つめながら、その男はゆっくりと静かに近づいてくる。 羽野の顔を見ると、少しだけ青ざめていた。 (……羽野?) 心配になって肩をそっと掴もうとする。 ビクッ (……え?) しばらくなかった拒絶反応に、俺は手を引っ込めてしまった。 「な……なんで……」 羽野が小さくそう呟く。 目の前の男は小さく笑うと 「…なんだその格好…」 と苦しそうに顔を歪めた。 胸がざわざわと蠢き出す。 別に、目の前の男が危険人物だと察したわけでも、羽野が特別嫌がっている訳でもない… (むしろ…) むしろ、二人の間に、不思議な空間があるように感じられる。 上手くは説明できない…柔らかくて優しい、誰も邪魔出来ないような独特な空間…… 俺が入ることを許してくれないような…二人だけの空間 それが何故か、俺の心を強くざわつかせた。

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