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「い、いや…そんなこと…大丈夫、なんだけど…」 咄嗟に手を横に振って否定する。 それよりも… (何で、俺をここに連れてきたんだ…) そこが俺の中で目覚めた今もずっと心に引っかかる。 (確か、紅月 涼の絵を描いてるところは、誰も見たことないんだよね…それに、描いてる場所だって……) 美術の雑誌で一度見たことがある。紅月 涼は自分の空間を崩されたくないから、誰にも描いてる途中の作品を見せたり…描いてる姿や場所は見せないって……なのに… (なんで、俺にはあっさりと……) そんなことを考えてる俺に気がついたのか、紅月 涼はニコッと微笑み 「なんか、大丈夫そうだったから」 「……へ?」 「冬麻くんは、俺の空間を崩さない」 きっと俺は今、間抜けな顔をしているだろう… 目の前にいる芸術家の言ってることが全く理解出来ない…… 「ふふっ(笑)まぁ、俺が良かったらそれでいいの」 な、なんだそれ!? 思わずつっこみそうになりながらも、こんなすごい人に言うのは失礼なので、ぐっと堪えた。 「…花畑?」 一瞬敬語にした方がいいのか迷ったが、同い年なので気にしなくていいだろうと思い、タメ口で聞く。 「ん?そう、前の作品の続きを」 前の作品の続きって…… 「もしかして、タチアオイ…?」 その言葉に紅月 涼は目を見開く。 「…よく、分かったね」 「へ?あ、あってた?」 あれだけある花の作品の中で当てられたことに自分でもびっくり。 「うん、正解」 ちょっとだけ嬉しくて「やった」と小さくガッツポーズした。

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