129 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「い、いや…そんなこと…大丈夫、なんだけど…」
咄嗟に手を横に振って否定する。
それよりも…
(何で、俺をここに連れてきたんだ…)
そこが俺の中で目覚めた今もずっと心に引っかかる。
(確か、紅月 涼の絵を描いてるところは、誰も見たことないんだよね…それに、描いてる場所だって……)
美術の雑誌で一度見たことがある。紅月 涼は自分の空間を崩されたくないから、誰にも描いてる途中の作品を見せたり…描いてる姿や場所は見せないって……なのに…
(なんで、俺にはあっさりと……)
そんなことを考えてる俺に気がついたのか、紅月 涼はニコッと微笑み
「なんか、大丈夫そうだったから」
「……へ?」
「冬麻くんは、俺の空間を崩さない」
きっと俺は今、間抜けな顔をしているだろう…
目の前にいる芸術家の言ってることが全く理解出来ない……
「ふふっ(笑)まぁ、俺が良かったらそれでいいの」
な、なんだそれ!?
思わずつっこみそうになりながらも、こんなすごい人に言うのは失礼なので、ぐっと堪えた。
「…花畑?」
一瞬敬語にした方がいいのか迷ったが、同い年なので気にしなくていいだろうと思い、タメ口で聞く。
「ん?そう、前の作品の続きを」
前の作品の続きって……
「もしかして、タチアオイ…?」
その言葉に紅月 涼は目を見開く。
「…よく、分かったね」
「へ?あ、あってた?」
あれだけある花の作品の中で当てられたことに自分でもびっくり。
「うん、正解」
ちょっとだけ嬉しくて「やった」と小さくガッツポーズした。
ともだちにシェアしよう!