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「…よく知ってるね?」 「あ、うん…紅月 涼の作品の中で、タチアオイが一番好きなんだ」 「……へぇ、変わってるね」 ……あ、やばい…いつもの癖でフルネーム呼びをしていたことに気づく。 「あ、あの…ごめんなさい」 「……え?なんで?」 「呼び方…」 「あぁ、別にいいよ?俺も君のこと羽野冬麻って呼んでたし」 ………へ!?!? 「え、なっなんで…よ、呼ぶって……」 「…ん?俺、変なこと言った?」 言った……思いっきし言った!! 「うーん、まぁ、いいじゃん」 (いやいや、良くないでしょ!!!) 相変わらず声に出せずにつっこんでいると 「…俺のファンなの?」 「へ!?」 「ふふっ(笑)そんな驚く?」 な、なんで……バレて……あ、作品名… 「嬉しいなぁ、同世代のファンがいるなんて」 「…は、恥ずかしく、ないの?」 「??どうして?」 だって…… 「だって、ものすごく絵が下手なこと…さっき知ったでしょ?」 今まで誰にも紅月 涼のファンだって言ったことがない。それは、自分の絵の下手さを理解していた上での行動だった。 何よりも、僕一人だけでなく、紅月 涼自身を否定されたら…それこそファンとして、いていいのか…不安になる。 「なんで?上手いじゃん」 「……えっ?」 「俺は好きだよ?…さっきの向日葵」 美術室で言ったセリフをもう一度繰り返し言う。 俺は驚きのあまりなんて言ったらいいのか分からず、口をパクパクさせた。

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