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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「…よく知ってるね?」
「あ、うん…紅月 涼の作品の中で、タチアオイが一番好きなんだ」
「……へぇ、変わってるね」
……あ、やばい…いつもの癖でフルネーム呼びをしていたことに気づく。
「あ、あの…ごめんなさい」
「……え?なんで?」
「呼び方…」
「あぁ、別にいいよ?俺も君のこと羽野冬麻って呼んでたし」
………へ!?!?
「え、なっなんで…よ、呼ぶって……」
「…ん?俺、変なこと言った?」
言った……思いっきし言った!!
「うーん、まぁ、いいじゃん」
(いやいや、良くないでしょ!!!)
相変わらず声に出せずにつっこんでいると
「…俺のファンなの?」
「へ!?」
「ふふっ(笑)そんな驚く?」
な、なんで……バレて……あ、作品名…
「嬉しいなぁ、同世代のファンがいるなんて」
「…は、恥ずかしく、ないの?」
「??どうして?」
だって……
「だって、ものすごく絵が下手なこと…さっき知ったでしょ?」
今まで誰にも紅月 涼のファンだって言ったことがない。それは、自分の絵の下手さを理解していた上での行動だった。
何よりも、僕一人だけでなく、紅月 涼自身を否定されたら…それこそファンとして、いていいのか…不安になる。
「なんで?上手いじゃん」
「……えっ?」
「俺は好きだよ?…さっきの向日葵」
美術室で言ったセリフをもう一度繰り返し言う。
俺は驚きのあまりなんて言ったらいいのか分からず、口をパクパクさせた。
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