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「ふふっ(笑)そんな驚くとこ?」
いや……だいぶ驚くとこ……
「上手じゃん、絵」
「いや…生まれて初めて言われたんだけど…」
「そう?」
ニコニコ笑いながら絵の具をガサゴソと片付け出す。
「だったら冬麻くんの方が変だと思うよ?」
「え?…な、なんでですか?」
「俺の作品の中でタチアオイが一番好きだなんて…それに、今書いてる作品だって当てたし」
紅月 涼は「なんで分かったのかなぁ」なんて不思議そうに作品を見つめていた。
「…なんとなく、なんだけど…色合いがタチアオイに近いなって感じたこと、あと…儚い感じの雰囲気?…が、タチアオイに…似てたから」
俺の言葉に紅月 涼は片付けていた手を止める。
「…似ていたから、タチアオイだと思ったの?」
「う、うん…なんとなくだけど」
そう答えたら紅月 涼は口を手で押え、何か考えてる様子を見せた。
「俺、別に意識して似せたわけじゃないんだけどな…」
「へ?」
「むしろ、真逆のイメージかなぁって…思ってたんだけど……」
紅月 涼はそう言ってから静かに黙り込む。
(な、なんか…余計なこと言っちゃったかな…)
なんて少しだけ不安になりながら作品をもう一度チラッと見た。
やはり、美しい…その美しさはタチアオイの作品に重なってならない。
「……なんで、タチアオイの作品が好きなの?」
「……え?」
ふと作品を見ていた視線を紅月 涼へ移し替える。
「だって、あれは裏切りがテーマなんだよ」
笑いながらそう言う紅月 涼の目には、悲しみが帯びていた。
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