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紅月 涼はびっくりしたように目を見開けるとそのままふふっと小さく笑う。 「面白いね、冬麻くんって」 「お、面白くは…ないけど」 「ううん、面白いよ」 …何を言っているんだ、この人…… 「…じゃあ俺がタチアオイなんだ」 「うん…そうだよ」 僕の言葉に「ハッキリ言うね(笑)」なんて言いながらもう一度筆を持つ。 「…じゃあ、熱狂的な俺のファンである冬麻くんに、いい情報教えてあげる。」 「…え!ほんとに?」 本人から教えてくれる、いい情報なんて…レアに決まってる。 「ふふっ(笑)おいで」 ふわっとまた微笑むと俺の腕を思いっきし引っ張った。 「…うわっ」 そのまま作品である屋上の床に座らされる。 「…うん、やっぱ…綺麗」 「…え?」 紅月 涼は筆を持った手を振りかざしそのまま壁に絵の具を塗った。 (うわぁぁ…) いわゆる壁ドンと言われる状態で、真剣な目をした紅月 涼が壁に絵を描き始める。 (こんな間近で……夢みたいだ…) 少しだけ感動していると、「…出来た」と小さく呟いた紅月 涼の声が耳に入る。 「え?出来た…「立たないで」 (た、立たないでって…) 戸惑いながらも、言われたようにその場で座り込んでいる。 「……冬麻くんはこの作品がタチアオイの続きだって分かったんだよね」 「…そう、だけど……」 「その理由がタチアオイと同じ雰囲気を感じ取れたからだと…」 「……うん」 その通り、俺が紅月 涼に言ったまんまだ。 「もしかしたら、俺と冬麻くんって似てるのかもね…」 「……へ?」 「だって、この作品がタチアオイと同じだって思ったんでしょ?」 「…え、そうだけど……なんで?」 俺の問いかけに「んふふ」と小さく笑うだけで、何も答えてくれない。 …似てるなんて……紅月 涼と俺なんて似ても似つかないだろう…性格だって違うだろうし… 「じゃあいい情報教えてあげるね」 ようやくお目当てのものを教えてくれると分かり、少しだけドキドキとする。 絵の具を床に置き、ゆっくりと俺の前に歩み寄った。 「この作品の名は「サザンカ」、花言葉の意味は「困難に打ち克つ」「ひたむきさ」、「あなたが最も美しい」」

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