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そのまま何もせずに二人、公園のベンチで座っている。
夕方の空から夜空に変わった冬の景色は、どこまでも美しい。
「…なんで、俺を奪っていかないの」
ふと涼へ、疑問に思ったことを問いかけた。
「なに?奪って欲しいの?」
涼の言葉に思わず首をぶんぶんと横に振る。
「なんでってなぁ…たぶん、昔の冬麻だったら、何がなんでも奪っていったと思うよ」
…昔の、俺……
「…やっぱり、こんな奴になったから?」
こんなダサい格好で、こんなうじうじとした…鬱陶しい奴になってしまったからだろうか…
「ちげぇって、冬麻はどんな姿になっても…冬麻だろ?」
涼がふわっと笑い、髪をクシャッと撫でる。
その瞬間、涼の友…いや、親友で良かったなと思った。
「じゃあ…なんで?」
「…強くなった」
「……え?」
思ってもみなかった言葉に俺は聞き返してしまう。
「…俺がなんで冬麻を「サザンカ」に例えたか…知ってるか?」
俺は首を横に振った。
「……ずっと、気になってた」
「え?」
「クラスの真ん中にいて、曲がったことが嫌いで、誰よりも正義感の強い…お前のことが」
胸がドキンと高鳴る。
「俺とは、違う人間だと軽蔑してた…それと同時に、もっと知りたいって思った」
「……」
「その、真っ直ぐな美しさみたいなものが…サザンカそのものだと感じたんだ」
初めて知る、俺をサザンカに例えた理由に俺は驚きを隠せないでいる。
そんな俺に対して、涼は悲しそうに笑った。
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