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「けど、違った。」 涼の言葉に思わず「え?」と声が漏れてしまう。 「冬麻と話すようになって、お前の家庭事情を知る度…決して見せない努力を感じ取る度……いつか消えてしまいそうで、ボロボロに崩れ去ってしまいそうで」 「……」 「その予想が…的中してしまった」 涼が俺の頭…おでこを優しく撫でる。 瞬間、少しだけ過去を思い出し…震えそうになった。 「…助けたかった、俺と…似ていない、誰よりも勇敢なお前を」 撫でていない方の手にぐっと力が籠る。 「……守りたかった、俺と同じ…誰よりも弱いお前を」 涙が…溢れ出てきそうだった。 もう…過去のことで泣きたくない。 「…お前が、あの頃のままだったら、あの三人に出会ってなかったら連れされたのにな…」 涼がふわっと微笑む。 「…強くなったな、お前」 「……っ」 けど、今日だけは…どうか泣かして? 「り、涼……ごめんなさい…突然、消えてごめんなさい」 「……ううん」 「一人にしないって…い、言ったのに……守れなくて、ごめんなさい…」 「…そのおかげで、…涼は強くなったんだろ」 涼が俺の眼鏡をそっと外す。 「…もう、タチアオイと似た、サザンカの姿はないね」 「……」 「あの絵のモデルは、どこかへ消えちゃった」 そう言う涼は、本当に美しくて… 「サザンカ」が思いを寄せていた 「タチアオイ」そのものだった。 けど、もう違う。 「だって、…僕はもう、サザンカじゃないよ?」 「……え」 サザンカの花は、もう捨てた。 あの頃の自分はもういない。 「僕は、何度踏まれても…立ち上がれる 雑草だから」 今の僕を傷つけられるのは、涼でも親でもクラスメイトでも…アイツでもない…… 向日葵…ただ一人だけなんだ。

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