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(蓮side) 涼くんが冬麻くんに渡した絵は、びっくりするほど美しくて、壮大で…本当に凄い芸術家なんだと思い知らされる。 冬麻くんは、確か…涼くんのファンだったんだっけ? 何も発さずにただ呆然と立ち竦んでいた。 「…凄い……なんで花畑なの??」 ひろくんが目をキラキラさせながら問いかける。 「ん?…今の冬麻に渡すプレゼントだったら、これかなって」 …今の、冬麻くん? ふわっと微笑む涼くんに、冬麻くんの表情が少しだけ柔らかくなる。この絵の何がそうさせてるのかは分からない。二人にしか分からない空間がまた、生まれていた。 「…今までは、何の絵をプレゼントしてたの?」 黙り込んだままだった夏喜が、涼くんに問いかける。 (おぉ、何も出来なかった夏喜が…踏み込んでる……) 何故だか我が子の小さな成長の様に感じて、ほんの少し感動した。 (…今のって事は、中学時代に渡してたプレゼントも意味があるんだろうな) 俺達の知らない、冬麻くんを知れるようで思わず前のめりになる。 「何のって…」 チラッと冬麻くんの顔を涼くんが確認した。 …やはり、触れてはいけない所だろうか…… 「…サザンカ」 「え?」 涼くんではない、冬麻くんの声に全員がびっくりした顔を見せる。 「サザンカの…花、一本に、タ…タチアオイの、花……びらが舞落ちてる…絵」 サザンカ?…それに、タチアオイの花びらって… 涼くんはふふっと小さく微笑むが、いつもとは違う、少しだけ悲しそうな…微笑み。 渡し続けてきた絵は、目の前にある、温かくて花いっぱいの絵とは違うのだろう。 実際に見た訳じゃないが、そう思ってならなかった。

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