207 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
(蓮side)
涼くんが冬麻くんに渡した絵は、びっくりするほど美しくて、壮大で…本当に凄い芸術家なんだと思い知らされる。
冬麻くんは、確か…涼くんのファンだったんだっけ?
何も発さずにただ呆然と立ち竦んでいた。
「…凄い……なんで花畑なの??」
ひろくんが目をキラキラさせながら問いかける。
「ん?…今の冬麻に渡すプレゼントだったら、これかなって」
…今の、冬麻くん?
ふわっと微笑む涼くんに、冬麻くんの表情が少しだけ柔らかくなる。この絵の何がそうさせてるのかは分からない。二人にしか分からない空間がまた、生まれていた。
「…今までは、何の絵をプレゼントしてたの?」
黙り込んだままだった夏喜が、涼くんに問いかける。
(おぉ、何も出来なかった夏喜が…踏み込んでる……)
何故だか我が子の小さな成長の様に感じて、ほんの少し感動した。
(…今のって事は、中学時代に渡してたプレゼントも意味があるんだろうな)
俺達の知らない、冬麻くんを知れるようで思わず前のめりになる。
「何のって…」
チラッと冬麻くんの顔を涼くんが確認した。
…やはり、触れてはいけない所だろうか……
「…サザンカ」
「え?」
涼くんではない、冬麻くんの声に全員がびっくりした顔を見せる。
「サザンカの…花、一本に、タ…タチアオイの、花……びらが舞落ちてる…絵」
サザンカ?…それに、タチアオイの花びらって…
涼くんはふふっと小さく微笑むが、いつもとは違う、少しだけ悲しそうな…微笑み。
渡し続けてきた絵は、目の前にある、温かくて花いっぱいの絵とは違うのだろう。
実際に見た訳じゃないが、そう思ってならなかった。
ともだちにシェアしよう!