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「…この花畑は、何の花が描かれてるの?」 ひろくんがニコッと笑いながら涼くんに問いかける。 「…沢山の花を描いたけど、メインで描いてるのは、フリージア・ラナンキュラスかな…あと、向日葵」 確かに、二つの花がキャンバスの多くを纏っている。ただ、それ以上に真ん中にある…一輪の花を取り囲むように綱で纏った向日葵が印象的だった。 「え、じゃあこの真ん中にある、一輪の花は?」 向日葵に守られるようにして咲いてる、一輪のみの花… 「…これが、サザンカだよ」 何故だろう、胸が大きく高なった。 この絵が何を表しているのか…分からない。ただ、優しくて温かい…美しい世界が広がっているのだけは分かる。 分かれば分かるほど、浮かんでくるんだ。 過去にプレゼントした、サザンカにタチアオイの花びらを振らせた絵… 見た事もない、その絵が頭に浮かんでくる。 優しくて温かい世界にいる冬麻くんは、嘗てどんな世界にいたのだろう。 ふわりと笑う涼くんに、優しくて物静かな冬麻くん… 嘗ての二人は、どんな人だったんだろう。 優しい世界を見れば見るほど、知らない自分が怖くなる、 だって、サザンカの周りに降っていたタチアオイの花びらは、サザンカと程遠い所で舞っていたから。

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