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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「…河木…くん?」
「…あのさ」
心配そうな顔で俺を見る羽野と向き合う。
「羽野は…」
「中学の時、どんな姿だったの?」…そう言いかけて声が詰まる。
ゆっくりと距離を縮めていけばいい、羽野が話したくなるまで…待てばいい。
そう思えば思うほど、焦りが出てくるんだ。
「…河木…くんは…」
羽野に名前を呼ばれてハッとする。
「…ぼ、僕の…昔の姿…知りたい…の?」
俺の聞きたかったことを羽野から言われ、心臓がドクンッと鳴った。
一瞬、なんて答えたら良いのか分からなくなる。
素直に頷くべきか、それとも…
「い、今は…気使わないで……」
「……え?」
「か、河木くんが…知りたいか…ど、どうか…だから……僕は、多分…だ、大丈夫」
羽野が俺の目をじっと見る。
「もう、…逃げたく…ない」
羽野ってこんなにも強かったっけ?
強くて素直で真っ直ぐで…痛いぐらいに羽野の気持ちが伝わってくる。
前に進もうとしている気持ちが…苦しいぐらいに…
「知りたい」
けど…
「羽野がまだ、話せないっていうなら、いくらでも待つよ。…何年でも」
何年経っても、羽野とは大切な友達だから。
無理矢理、話すことはない。
「…あ、ありがと…」
羽野が少しだけ下を向き、眼鏡をクイッと上げる。
「…正直、全ては…ま、まだ…怖い」
怖い…
「けど、少しだけ…でも、…知ってて…貰い…たい」
手がほんの少しだけ、震えている。
「…教えて、羽野のこと」
震えてる手を、俺の手でギュッと包み込んだ。
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