216 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「…普通の、格好…だったんだ…中学のとき…は」
ゆっくりと羽野が話し出す。
「…め、眼鏡も…かけてなかったし、…前髪も…長くなかった…」
眼鏡も…?
「目が悪い訳じゃないの?」
「…か、隠す為なだけ…」
隠す…ため?
(何を隠す為なんだろう…)
羽野は俯きながら眼鏡をクイッと上げる。
「…コンプレックスに…なったんだ、中学…の、時…」
「…え?」
「……目が…」
目を隠すために、目も悪くないのに眼鏡をかけ、前髪を伸ばしたの?
…コンプレックスになる様な出来事って…
「…それ以来、人前で…前髪を上げたり、…眼鏡を…外したりは…怖くて……」
握っていた手がまた小さく震える。
「…無理に話そうとしなくていいから」
過去を話せば話すほど、羽野が壊れていきそうで…怖い。
「それでね、…コンプレックスに…なる様な出来事が……あって…」
羽野は俺の言葉を無視し、そのまま言葉を続ける。
「羽野…「涼の前から消えたの…」
「え?」
「…何も…信じられなくて……逃げた、中学を…知る人から……信じてくれた涼から…」
羽野と涼さんが再会した日の事を思い出す。
その日から今まで、毎日の様に羽野に会いに来ていた。
何があっても、傍に居続けていた。
まだ、羽野の事で気になることは沢山ある。
けど、
「ありがとう、話してくれて」
今は、これだけで十分だ。
ともだちにシェアしよう!