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(夏喜side)
さっきから表情をコロコロと変えていく羽野。
(かわい(笑) )
羽野は意外と表情豊かだ。
それも自分で気付いてないからキュンキュンくる。
ずっと見ていたい可愛さだ。
未だに顔を赤くさせ、あたふたと慌てる羽野をじっと見る。
コロッ
「あっ…」
その時、羽野の持っていた鞄の中から、キラキラした物が地面に転がった。
「…これ」
咄嗟に手に取ったそれは、先日見た物と同じ…涼さんが持っていた、シルバーの高そうなブレスレット。
彫られている花の種類だけが、違うものだった。
「あ、ありがと…「タチアオイ?」
「…え?」
思わず羽野にそう聞いてしまう。
涼さんが持っていたものは、羽野にプレゼントした絵に描かれている、サザンカの花が彫られていた。
…なら、これは……
「うん…タチアオイの…花だよ」
胸がドクンッと嫌に鳴る。
(なんで…)
まただ、何でこんなに胸が痛いのだろう。
別に、涼さんと羽野は中学からの仲だ、お揃いの物があって当然。
なのに…
「大事なの?」
「え?…う、うん…大事…だよ?」
(…へぇ、大事なんだ…)
「鞄の中で持ち歩いてるぐらい?」
「う、うん…そう…だけど」
目の前でびっくりしたような表情を見せる羽野。
一体、自分が何をしたいのか全く分からない。
こんな事を聞いても仕方ないし、意味が無いのに…
「涼さんと羽野って仲良いもんね」
「か、河木…くん?」
口が止まってくれない
「あ、あの…」
戸惑う羽野に手を伸ばす。
そのまま頭に触れるとビクッと震えた。
(涼さんにされても、驚かないくせに)
クシャッとそのまま頭を撫で、優しく頬に手を動かす。
その瞬間、氷になったみたいに羽野は固まった。
(そんなに固まんないでよ…)
固まってしまった羽野は、どうしたら良いのか分からないみたいに俯く。
(…何やってんだ、俺…)
自分の行動を何処か客観的に見ながらも、手が止まらない。
羽野の顎に手をあて、クイッと俺の方を向かせた。
(俺を見てよ)
今、視線の中に俺しかいないように、俺だけを見て。
今、頭の中が俺でいっぱいになってるように、俺だけの事を考えて。
涼さんの事なんか…見ないで。
「涼さんが、好きなの?」
「え? …!?」
驚く羽野を無視して、近かった距離をゼロにする。
そのまま俺は、羽野に口付けをした。
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