219 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
(冬麻side)
…え?
頭の中が、真っ白になる。
(…これ……え?)
唇に当たる優しい感触。
ふわっと香る、河木くんの匂い。
目線の先に広がるのは河木くんだけ。
スっと河木くんが僕から離れる。
その瞬間、今何が起こっていたのか理解出来た。
(なんで…)
分かっていても、分からない。
なんで、キスなんかしたのか…
聞きたいのに、頭が追いつかなくて上手く声が出てくれない。
「…な、なん「ごめん!」
(……え?)
やっと声を発せたと同時に、河木くんが僕に頭を下げる。
「…わ、忘れて…」
その瞬間、心臓が一瞬止まったかと思った。
この人は、何を言っているのだろう。
(…忘れて?)
そんなの、忘れられる筈ない。
河木くんにとったら、直ぐに忘れられるような事だとしても
キスなんて、日常茶飯事だとしても
僕にとったら…
「…ファーストキスだったのに?」
大好きな人との、初めてのキスなのだから。
何となくでも、遊びでも…理由は何でも良い。
ただ、河木くんにとって、僕とのキスは過ちだと思われた事が悲しかった。
ともだちにシェアしよう!