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一時間目直前に羽野は保健室から戻ってきたが、一言も話すことなく、昼休みの時間になってそそくさと羽野は教室から去っていく。
ため息をつく俺にクラスメイトは驚いた顔でこっちを見ていた。
「ちょっと、冬麻くん早足で廊下歩いてたんだけど?」
お弁当を持った蓮と陽斗が教室の中へ入ってくる。
「土曜日、一緒に帰ったんじゃなかったの?」
心配そうな陽斗に、顔を顰めた蓮。
何があったのか…言わないべきか迷ったが、黙っていても二人には迷惑をかけてしまうだろう…
それに、自分一人じゃこれからどうしたら良いのか分からない。
「実は…」
蓮と陽斗に帰りの出来事を話した。
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「「はぁ!?」」
二人の声がクラス中に響き渡る。
「は?何やってんの!?」
「…ま、まじか…」
絶句してる蓮に驚きを隠せないでいる陽斗…
(そりゃ、そう思うよな…)
「…しかも、寄りによって冬麻くんって…」
「…うん、まだ他の人だったら良かったものの」
(…うっ)
心臓にグサグサと刺さる。
「…わ、忘れてって…伝えたよ?」
「「はぁ!?!?」」
「……え?」
俺が羽野にキスした時よりも大きい反応に、思わず声を出してしまう。
「…それはないよ、つっきー……」
「ほんと…なんで乙女心分かんのに、冬麻くんの気持ちは分かんないわけ?」
な、なんでって…
だって、好きでもない奴にキスされたなんて…忘れたいことなんじゃないの?
……ましてや、ファーストキスなんて…
「はぁ…」
蓮が頭を抑えながらため息をつく。
「あ、あの…「俺には聞くなよ」
「…へ?」
「俺はあくまで冬麻くんの味方だから、夏喜がどうしたら良いかなんて教えてやんない」
バッサリと切り離す蓮に陽斗はあたふたと慌てる。
「れ、蓮…「せいぜい苦しめ」
最後にそう言い放つと蓮は弁当を片付け始め、
「行くよ、ひろくん」
「え、え?」
俺と蓮の顔を交互に見る陽斗を無視して、腕を引っ張りながら教室を出ていった。
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