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「…あ、あの」
「なに?」
「…どこへ、向かってるんですか?」
校門を出て、前を歩く涼さんに着いていくと見たことも無い場所に来る。
「いいからいいから」
(い、いや…良くないでしょ…)
今日は土曜日ほど寒くはないが、やはり寒い…
厚着でしっかり暖は取ってるものの…出来るだけ暖かい所へ行きたいものだが…
(…そんな事、言えないか…)
自分の立場上、涼さんにそんな事言えない。
俺の方を見ず、ただひたすら前を向き続ける涼さんに俺は黙って着いて行った。
「ここ」
「…へ?」
ようやく立ち止まり、到着の言葉を言った涼さん。
到着した場所は、古びた小さなアパートだった。
「…あ、あの…ここって…「アトリエ」
「…え?」
あ、アトリエって…
「ここで、俺は作品作ってんの」
「…こ、こんな所まで描きに「いや、何個かあるアトリエの一つ」
驚きを隠せないでいる。
(…な、何個かあるって……)
いくら古びたアパートだとしても、高校生が何個もアトリエを持ってるなんて…スゴすぎる。
ポカーンと上を眺めている俺を気にせず、涼さんは足を進め、アパートの中へと入っていった。
俺も急いで涼さんに追いつく。
階段をスタスタと上がり、着いた階は3階。
更に右へ曲がると一番奥の部屋へと辿り着き、涼さんは黙ったまま、鍵をガチャりと開けた。
「どうぞ」
「え、あ…ありがと」
「お邪魔します」と小さく呟きながら一歩部屋に踏み入れる。
その瞬間、絵の具の独特な香りが俺を包み込んだ。
辺り一面には画用紙が貼られていて玄関先から幻想的な絵が描かれている。
「土足で入って」
後ろからそう言われ、土足のまま足を進めて行った。
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