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羽野は困ったように下へ俯く。 どうしたら良いのか分からない時の、羽野の行動だ。 「…羽野?」 不安になり、声をかけると羽野は顔を上げる。 「か、…悲しかった」 「…え?」 思わぬ言葉に声を出してしまった。 (…悲しい?) 「…忘れてって……言われて…」 (…なんで?) やばい、羽野の気持ちを聞けば聞くほど…分からなくなる 「…な、なんで?」 「…え?」 本人が悲しいと言ってる事に、何故なのか聞くというのは…失礼な事だろう。 けど、「そっか、ごめんね?」だけで済まされる問題でもない。 少なくとも、俺はそうしたくない。 不謹慎だと思われても、羽野の気持ちが知りたいんだ。 「…なんで、悲しいの?」 羽野の腕をギュッと掴み、目をじっと見つめる。 こうなると、羽野は俺を突き放したりなどしない。 (ずるい奴…) つくづく、自分でもそう思う。 それを分かってて、俺は行動してるんだ。 「…わ、忘れられる訳ない………」 羽野の声が小さく震える。 「それを……簡単に、…忘れてなんて…言わないで…」 羽野が俺の目をじっと見る。 「無かったことに…しないで」 益々…分からなくなった。 もし、羽野が俺の不謹慎な言葉と行動に怒っているのなら、全て理解出来る。 けど… (悲しい?) 無かったことに、されるのが? 頭の中が、パニックでいっぱいになる。 それは、今まで…思いもしなかった考えが浮かんだから 考えもしなかった、甘酸っぱくて優しい考え (羽野が…俺の事を好き?) 点と点が線になっていく… モヤモヤしていた頭が自分の中でストンと腑に落ちる それと同時に、正常だった心臓がドクンドクンと早まった

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