(冬麻side) いつだって、河木くんはずるい人。 気持ちなんかないのに、優しくして甘々な雰囲気かもちだして…キスして 掻き乱したかと思えば、悲しい言葉で傷つける。 ホントに、ずるい人… 今だってそう。 ｢忘れて｣って言ったのは河木くんなのに、僕が距離を取ると離すまいと追ってくる。 本気で僕が嫌がってないと分かってて、行動してる。 河木くんの事を、追い返せないって分かってて僕に問いかけてくる。 ｢なんで、悲しいの？｣ …じゃあ、なんでキスしたの？ 聞きたくて聞きたくて…なのに、声が出てくれない。 聞いてしまえば、思いが止まらなくなりそうで、…取り返しのつかないことになりそうで。 (そんな目で…見ないでよ) 忘れて欲しいんでしょ？ キスしたこと、あなたが無理矢理してきたのに…なんで僕が虚しくなってるの？ なんで僕が、忘れて欲しくないって思ってるの？ ｢…わ、忘れられる訳ない………｣ 言ってはいけないのに… ｢それを……簡単に、…忘れてなんて…言わないで…｣ 河木くんを…困らせるだけなのに ｢無かったことに…しないで｣ 思いが止まらない。 止められない。 (…好き) お願いだから、僕を踏みにじらないで 目から涙が溢れ出ていた。