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(夏喜side)
煩い心臓を押さえつけ、とにかく落ち着けと自分を言い聞かす。
(落ち着け…冷静になれ…)
一向に収まる気配のない心臓を他所に、何か答えなきゃと羽野の顔を見た。
(…え)
あんなにも煩かった心臓が、突然ドクンと音をたて、止まる。
顔の血の気が引いていくのが分かった。
(…泣い、てる?)
胸にズキンとした痛みが走る
顔を少し俯かせ、羽野は静かに涙をポロポロ流していた。
(………)
腕を伸ばし、羽野の頬にそっと触れる。
羽野の肩が大きく揺れた。
無意識に涙を拭いていた。
何も感じず…ただ、羽野が泣いてる姿を見ていたくなくて
羽野に触れたくて…
俯き気味だった羽野の顔が少しだけ上がり、俺を見る。
眼鏡のせいで、上手く表情が読み取れない。
(今、何を考えているの?)
案外分かりやすい羽野だが、基本は誰よりもポーカーフェイス。
今の羽野は、それを象徴しているようで焦れったくなった。
「なんで…忘れて欲しくないの?」
羽野の目をじっと見つめる。
先程聞いた時みたいに、肩が揺れたり等はしない。
ただじっと、目を離さずに俺の前にいた。
羽野の閉ざされていた口がゆっくりと開く。
「好きだから」
ポーカーフェイスだと思っていた羽野の声は震えていて、また一つ涙を零した。
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