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「え、こ…この図鑑…え…っと…」 慌てふためく僕を他所に河木くんはニコニコするだけで何も言ってはくれない。 「使ってくれて良かったぁ」 ただ、そう…繰り返すばかり…… (え…、じゃあこの図鑑を置いていってくれた優しい見知らぬ人は河木くんってことで…) 何故、置いていってくれたのか… (わ、忘れた訳じゃないよね…) 確かに、図鑑には(お疲れ様)の文字が挟まれていた。 「な、…なんで…」 「ん?」 「な、なんで…この図鑑を…僕に置いていって…くれた、の?」 分からなくて、ニコニコ笑顔の河木くんに聞いてみる。 すると、河木くんは少し、照れくさそうにしながら、 「前にさ、羽野が中庭で一人飯食ってんの見てたって言ってたじゃん」 一瞬、なんの事か分からなくて記憶を蘇らせてると 「俺さぁ、あの時だけじゃなくて、ずっと羽野よこと見てたんだよね」 (!?!?!?) な、な…なっ!? 軽く思い出してきたと同時に、放たれた衝撃発言… 中庭で僕を見ていたと告白された時と同様、僕は戸惑いと驚きを隠せないでいる。 対する河木くんは、何故か前のように吹き出して笑うのではなく、顔を赤くさせ顔を背けた。 「それで、…その、羽野が…植物係頑張ってるの知って…、俺になにか出来ないかなって思ったんだ」 胸がドキンと高鳴る。 「まぁ、この図鑑教えてくれたのは斎藤先生なんだけどね?」 そう言いながら、照れくさそうに笑う河木くんは、いつも以上に柔らかくてキラキラしていて… 胸のドキドキが爆発しそうなくらい、増していくばかりだった。

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