261 / 437

┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈

(冬麻side) 風隼さんが、初めて涙を目に浮かべた。 初めて、僕が問いかけた質問に、何も答えなかった。 そっと、ハンカチを差し出す。 「…なに」 「……拭いて」 自分が泣いてる事に気付いてないのか、風隼さんは涙を拭こうとしない。 泣いてる風隼さんを見てたくなくて、僕はそっと頬に当てた。 「…あれ、俺…」 ようやく気付いた風隼さんは、俺の手を止めて、涙を抑え込む。 その風隼さんがあまりに儚くて… 僕はギュッと風隼さんに抱きついた。 「……っ」 驚いた風隼さんは、僕の腕の中から逃げようと藻掻く。 (離すものか) 何回風隼さんに抱きつかれてきたと思ってる。 簡単には離してなんかやんない。 「大丈夫…大丈夫だよ……」 安心させるよう、優しく背中を摩る。 藻掻いてた、風隼さんがピタリと止まった。 「僕で、大丈夫なんだから……風隼さんは、もっと大丈夫……だって、綺麗な人だもの」 何故、自分に自信がないのか不思議なほどに、美しくて可愛らしい人。 「…綺麗でも、無理なんだよ」 「……え?」 「綺麗でも…、ひろくんは見てくれない。ひろくんは皆が大切な人だから…」 あぁ、なんだ… 「一緒なんだ」 「……え?」 風隼さんは、自分に自信がない訳じゃない。 ただ、好きな人の前だと自分を下に見てしまう。 同じにしちゃダメなんだろうけど… 僕と一緒。 「…訳わかんない」 「あ、けど…風隼さんは、……本当に綺麗だから…み、見てくれるよ」 僕は…こんな見た目だから、見てくれないだろうけど…… 「何言ってんの?」 抱きしめていた風隼さんが、こちらをクルっと振り返る。 そのまま、ギュッと抱きしめてきた。 「冬麻くんは、可愛いよ?」 そういう風隼さんは、いつもの可愛らしくて魅力的な風隼さんがそこにいた。

ともだちにシェアしよう!