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(冬麻side)
風隼さんが、初めて涙を目に浮かべた。
初めて、僕が問いかけた質問に、何も答えなかった。
そっと、ハンカチを差し出す。
「…なに」
「……拭いて」
自分が泣いてる事に気付いてないのか、風隼さんは涙を拭こうとしない。
泣いてる風隼さんを見てたくなくて、僕はそっと頬に当てた。
「…あれ、俺…」
ようやく気付いた風隼さんは、俺の手を止めて、涙を抑え込む。
その風隼さんがあまりに儚くて…
僕はギュッと風隼さんに抱きついた。
「……っ」
驚いた風隼さんは、僕の腕の中から逃げようと藻掻く。
(離すものか)
何回風隼さんに抱きつかれてきたと思ってる。
簡単には離してなんかやんない。
「大丈夫…大丈夫だよ……」
安心させるよう、優しく背中を摩る。
藻掻いてた、風隼さんがピタリと止まった。
「僕で、大丈夫なんだから……風隼さんは、もっと大丈夫……だって、綺麗な人だもの」
何故、自分に自信がないのか不思議なほどに、美しくて可愛らしい人。
「…綺麗でも、無理なんだよ」
「……え?」
「綺麗でも…、ひろくんは見てくれない。ひろくんは皆が大切な人だから…」
あぁ、なんだ…
「一緒なんだ」
「……え?」
風隼さんは、自分に自信がない訳じゃない。
ただ、好きな人の前だと自分を下に見てしまう。
同じにしちゃダメなんだろうけど…
僕と一緒。
「…訳わかんない」
「あ、けど…風隼さんは、……本当に綺麗だから…み、見てくれるよ」
僕は…こんな見た目だから、見てくれないだろうけど……
「何言ってんの?」
抱きしめていた風隼さんが、こちらをクルっと振り返る。
そのまま、ギュッと抱きしめてきた。
「冬麻くんは、可愛いよ?」
そういう風隼さんは、いつもの可愛らしくて魅力的な風隼さんがそこにいた。
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