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「実は…ね」 涼に隠し事は通用しない。 中学の頃から分かっていた僕は、サッカー部のマネージャーに入ろうか迷っている事、迷っている理由、全てを話した。 ┈┈┈┈┈┈┈┈ 「やればいいじゃん」 全てを聞き終えて、初めに発した涼の言葉はそれ… 「そ、そんなに簡単に…「簡単だって」 「逆に迷うわけが分からない」とでも言うように、涼は首を横に傾げた。 「……簡単じゃないよ…今の僕には」 前の僕だったら、迷わずに入っていた。 例え周りに何か言われても慣れたものだったし、自分さえ我慢すればって… けど、今は違う。 河木くんやひろさんに…迷惑をかけたくない。 「……それは違うんじゃね?」 「……え?」 涼が僕の目を捉える。 「中学の冬麻と今の冬麻は、根本は変わってない。我慢強くて、自分だけ我慢したら…って常日頃かんがえてる」 涼の手が頬に触れた。 「変わったのは、環境なんだよ。今まで抱え込んできた全てを失ったお前は、その分心から信頼出来る人を作った」 「何もかも失ったお前は、無敵なんだよ」 心がギュッと掴まれる。 (涼は何でも分かってる…) この世のことも、自分のことも、未来のことも、過去のことも… 僕のことも 僕の何倍も知っているんだ。

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