291 / 437
┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
(夏喜side)
「…え」
涼さんの大きく見開いた目が俺を捉える。
(…あっ)
やっちゃった…
けど、そんな事を気にしてる場合ではない。
「羽野!大丈夫か?」
俺の腕の中で意識を失ってる羽野に、必死に声をかける。
羽野が倒れるのに出くわしたのはこれで3回目だ。
そして、腕の中に羽野を収めているのも。
「…とりあえず、家まで送ろ」
冷静な涼さんの一言が耳に届き、俺は3回目となるお姫様抱っこで、家を知る涼さんに着いて行った。
┈┈┈┈┈┈
「ここが羽野の家」
そう言って止まった場所は少し古めのアパート。
(ここが…羽野の住んでる家…)
建物を眺めてる俺に対して、涼さんはスタスタと足を進めていく。
俺も、慌てて後ろに着いた。
ガチャンッ
(………え?)
一つの部屋の前に来ると、涼さんは何食わぬ顔で自分の鞄の中から鍵を取り出し、扉を開ける。
驚きと疑問で頭がいっぱいな中、
「早く入れよ」
涼さんにそう言われ、何も言えないまま部屋の中へ入っていった。
ガチャン
玄関で靴を脱ぎ、恐る恐る部屋の中に入るが…物は少なく、とても殺風景。
「こっち」
涼さんに言われ、着いていくと、そそこは寝室だった。
ゆっくりと羽野をベッドの上に下ろし、布団をかけてあげる。
周りを見渡すが、そこには勉強に関する本ばかり。
羽野のプライベート空間を見ている気が全くしなかった。
「あ、あの…なんで鍵…「の前に」
疑問をぶつける前に、涼さんが声を重ねてくる。
「…着いてきたの?」
予想していた質問が、俺に降りかかった。
ともだちにシェアしよう!