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「…跡をつけたと言いうか……」 正直、今日は何だか羽野と帰りたくて、サッカー部の集まりが終わった後、陽斗を置いて走って帰ってきた。 走りに自信はあるし、実際涼さんと帰る羽野を見つけたんだけど… 「…眼鏡、外してましたよね?」 「………」 二人だけの空間が垣間見え、声をかけられず、どうしようかと迷った末に見た、衝撃の光景。 (…あんなにも怖がってたのに……) 中学時代を知る、涼さんに対しては眼鏡なんて関係無いものなんだろうけど、俺にとっては中々の衝撃だ。 実際、倒れた羽野を抱えた時、涼さんは自然に持っていた眼鏡を羽野にかけた。 そのおかげで、俺は羽野の顔を見てはいない。 「眼鏡がない方が、違和感ねぇし」 (…俺にとったら違和感だよ……) 「羽野が何を思っているのかも、分かりやすいからさ」 分かってる。 羽野はポーカーフェイスなんじゃない。 眼鏡と前髪で全てを隠しているだけだってこと。 本当は、表情豊かな人だってこと。 (…羨ましい) ダメだな、俺… 羽野の事を助けられてないのに、そんな事ばっか思ってる。 「頭撫でてたし…」 「つっきーだって、撫でんだろ?」 「頬っぺたとか、眉毛とか……唇とか…触ってたじゃん」 先程見た光景を思い出し、黒くて醜い感情が俺の中で渦巻く。 (…キスすんのかと思った) 唇を優しく触る涼さんに 顔は見えなかったけど…肩をビクつかせる羽野に 思わず、目を背けたくなった。

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