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「何、嫉妬?」 「…なっ、」 クスクスと笑いながら図星をついてくる涼さんに、言葉が言い返せない。 「大丈夫だって、俺がキスしようとする前に拒否られるだけだから(笑)」 「安心しろ」とでも言うように、涼さんは俺の肩をポンポンと叩く。 (…叶わねぇな……) 涼さんに抗うことなど…一生できないな…… 出来るやつがいるなら、余程の変人だろう。 「まぁ、何となくつけてきた意味は分かるし、良いんだけどさ」 (……聞いといて自己解決すんのかよ…) 相変わらずマイペースで自由気ままな涼さんに振り回されてばかり。 「あ、あの…何で鍵持ってんの?」 小さく伸びをする涼さんに、遮られた質問をもう一度ぶつけてみた。 「んーっとね、冬麻の親父さんから頼まれたの」 …え? 「お父さん…?」 「そう、お父さん。」 益々頭の中がこんがらがっていく。 「え、な何で?」 「何でって、そりゃ息子の一人暮らしは不安なんじゃねぇの?」 いやいや…娘の一人暮らしなら、不安になるのは分かる。 実際、家の親もそうだし… けど、息子? (考えにくい…) 「本当は手放したくなかったんだろうね…けど、冬麻の精神面とか考慮するには、一人暮らししかなかったんだろうし…」 少しだけ悲しみを含めた笑みに、心がざわつき出す。 (…精神面?) それは、きっと羽野の過去を暗示してるんだろう。 そうでもなきゃ、高校から一人暮らしをさせるなんて考えられない。 「…それが何で…合鍵に繋がるんだよ」 「……過去に関することだから、俺からは詳しく言えねぇけど…強いて言うなら、冬麻が消えないため」 「……え?」 「冬麻がちゃんと生きているか確認するために、親父さんから合鍵を渡された」

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