294 / 437

┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈

「…意味わかんねぇ……」 「そりゃ、何も知んなきゃ意味わかんねぇだろ」 涼さんの言葉に胸がズキンと痛む。 (…俺には何も理解出来ないってか?) ……そうだよ。何も理解出来てない。 それどころか、何があったのかも教えて貰えない。 中学時代に何かあって、羽野は心を閉ざした。 その情報以外、俺は何にも知らないんだ。 「…今日は傍にいてやれ」 「……え?」 突然涼さんが発した言葉に、思わず聞き返してしまう。 「アイツの心を癒してあげられんのは、つっきーだけなんだよ」 「……っそれって」 どういう意味? そう問いたくても、声が出てくれない。 声が出なくなるほど、涼さんの目に映る光は悔しさと悲しみと怒りと… 「頼む。アイツを救ってやってくれ」 俺に対する懇願の色が混ざっていたから。 ┈┈┈┈┈┈┈┈ 涼さんが帰り、家の中には俺と羽野の二人だけ。 親には「友達の家に泊まる」とだけ伝えておき、ずっと羽野の傍にいた。 「……俺は羽野を救えるかな?」 未だ眠っている羽野に、小さくそう声をかける。 案の定、答えなんか返ってこなくて、優しく羽野の頭を撫でた。 (…綺麗) 羽野の髪は、綺麗な漆黒。 顔を隠すためか、長くボサつく前髪も本当は真っ直ぐなストレートで… ずっと触っていたくなる。 (………) 不意に髪を撫でていた手が頬に当たった。 (さっき、涼さんが撫でてたんだよね) 頬に当たった手は、離れることをせず、そのまま優しく頬を撫でる。 真っ暗な感情が心を染め、同時に切なさと愛おしさが溢れ出てくる。 (…居なくならないで……) 暗くなった夜空に浮かび、羽野をキラキラと照らす月が美しくて… 照らされてる羽野は、もっと綺麗で… その美しすぎる光景に、俺は思わず唇を落とした。

ともだちにシェアしよう!