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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
(夏喜side)
気づいてしまった。
この、気持ちの名前を
気づかざる負えなかった。
3度目となる、羽野とのキスは
甘くて、ほろ苦くて…
「好き」が溢れ出るものだったから。
ほんの数秒、唇を押し当てそのままそっと離れていく。
(……少し、冷静になろう)
自覚したせいか、暑くなる顔を冷やすため、リビングへ向かおうと足を立てると
「…んっ」
(!?!?)
羽野がゆっくりと目を覚ました。
(…キスで目覚めるなんて……)
おとぎ話のような、シチュエーションに胸がドキドキとなってしまう。
冷静になろうと立てていた足も、座る体制に戻し、
(……どうしよ)
自覚したばかりの自分には、この状況があまりにも苦だった。
「…あ、だ大丈夫?」
とにかく、何か話さねばと思い、目覚めたばかりの羽野に体調を聞いてみる。
「…う、うん」
それだけ答えた羽野だったが、やはり心配ではあって…
恐る恐る、そっと頭に手を当てた。
(…やっぱりサラサラ……)
柔らかくて絡まりの無いストレートな髪は、俺の指をスルスルと滑り落ちていく。
心地よくなってきたのか、ベッドの上にいる羽野はウトウトしだした。
思わず、手をピタリと止めてしまう。
何故止まってしまったのか…
自分でもよく分からない。
ただ、目の前で安心しながらベッドの上でウトウトする姿に
あまりにも、無防備すぎるこの状況に
「……あ、あの…」
理性が上手いこと働いてくれる保証は出来ない。
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